男性      女性

※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。

略歴

1920.4.1‐1997.12.24
中国・山東省青島生まれ。軍隊経験を経て戦後、46年に東宝第1期ニューフェイスに合格し、「銀嶺の果て」(47)で俳優デビュー。翌年に黒澤明監督作「酔いどれ天使」の主役に抜擢され、以降は「赤ひげ」(65)まで、「生きる」(52)を除くすべての黒澤映画に出演。ヴェネチア国際映画祭グランプリに輝いた黒澤監督の「羅生門」(50)によって国際スターの仲間入りをし、「グラン・プリ」(66)、「太平洋の地獄」(68)、「レッド・サン」(71)、「1941」(80)などの海外映画にも出演。“世界のミフネ”として活躍する。一方では62年に三船プロダクションを設立し、石原裕次郎と共に大ヒット作「黒部の太陽」(68)を生み出すなど、スター・プロダクションの名声を上げた。

ここがすごい!

黒澤明とのコンビで知られる日本を代表するスター。「醉いどれ天使」(48)から「赤ひげ」(65)まで16本、全30本ある黒澤作品の半分以上に出演した計算になる。東宝ニューフェイス(第1期)の面接試験では審査員の大半から不興を買ったものの、黒澤明の師・山本嘉次郎監督の強い推薦を受けて入社。都会的な東宝のカラーに収まらない野性味あふれる雰囲気と重量感ある芝居が魅力で、古風で気骨ある軍人や武士の役が良く似合った。その反面、素顔はシャイで実直な人物で、自ら自宅の前を掃除するほどスターらしからぬ飾り気のない性格だったという。黒澤以外では岡本喜八、稲垣浩、谷口千吉などの作品に多く出演したほか、「グラン・プリ」(66)など海外作品でも活躍。また、独立プロ“三船プロ”を立ち上げて映画製作にも乗り出した。

これは必見 KINENOTEおすすめの3本
  • 七人の侍
  • 日本映画の金字塔であると同時に、黒澤×三船コンビの代表作。三船演じる菊千代は、百姓を守る“七人の侍”の1人だが、百姓出身で武士に憧れるそのキャラクターは、両者をつなぐ存在として物語上の要になっている。
  • レビューから
  • このダイナミックなスケール感。観応えたっぷりな傑作。七人の侍から脇に至るまで名優揃いのこの映画を、初めて目にした時の衝撃は未だに忘れられない。それまで洋画メインで観ていた私の姿勢を糺してくれた。
  • 醉いどれ天使
  • 黒澤×三船の黄金コンビが初めて顔を合わせた記念すべき作品。主人公は志村喬演じる医師だが、エネルギッシュな芝居でヤクザの松永を演じる三船に魅了された黒澤監督は、2人のバランスを取るのに苦労したという。
  • レビューから
  • 改めて見ると、三船敏郎が色んな意味でまだ若く演技もまだ堅苦しい。それでもなお、その熱演に光るものを感じさせる。志村喬の存在感もすばらしい。
  • 男はつらいよ 知床慕情
  • 北海道の知床を舞台にしたシリーズ第38作で、無骨な獣医を演じた。スナックのママに、ぎこちなく愛を告白する場面は本作の白眉。相手役の淡路恵子は、三船主演の「野良犬」(49)でデビューしたという縁も。
  • レビューから
  • 知床半島の観光映画と言って良いほど名所を紹介しまくっているが、さすがに世界の三船敏郎、セリフは寅さんの1割程度でも、全然ひけを取らない貫録である。淡路恵子と組んで盤石の存在感を見せる。

略歴

1911.1.13‐1973.10.7
北海道札幌市生まれ。作家・有島武郎の長男。29年から新劇俳優として活躍し、42年に「母の地図」で映画デビュー。「安城家の舞踏会」(47)で没落貴族のニヒルな長男を演じて一躍注目を浴び、映画スターの地位を確立。黒澤明の「羅生門」(50)や「白痴」(51)、溝口健二の「武蔵野夫人」(51)や「雨月物語」(53)など日本映画を代表する巨匠の作品に出演したが、その最高峰は成瀬巳喜男監督の「浮雲」(55)で演じた、腐れ縁の女に引きずられて駄目になっていくインテリの中年男役だろう。この演技によってキネマ旬報ベスト・テン男優賞を受賞。その後も知的でニヒルな二枚目として個性を発揮し、映画や演劇で活躍した。

ここがすごい!

出演作が次々と海外で評価され、日本映画黄金期を支えた知的な演技派俳優。作家・有島武郎の長男で京都帝国大学入学(後に中退)という出自から滲み出る知的で洗練された雰囲気と、新劇で培った演技力を武器に多数の作品で活躍。端整な顔立ちに繊細な雰囲気を漂わせながらも、時にしたたかに時に冷淡な芝居で、善人から悪人まで幅広い役を演じ続けた。その演技に対する周囲の信頼は厚く、黒澤明、溝口健二、成瀬巳喜男など巨匠の作品に次々と出演。さらに、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞とアカデミー賞名誉賞を受賞した「羅生門」(50)を始め、「雨月物語」(53)、「武士道残酷物語」(63)など出演作が次々と海外の映画祭で受賞し、黄金期の日本映画に欠かせない俳優の1人となった。

これは必見 KINENOTEおすすめの3本
  • 浮雲
  • 海外の赴任先で出会った男女の愛の行方を描いた成瀬巳喜男監督のメロドラマ。高峰秀子演じるヒロインに曖昧な態度を見せる官僚という役柄は、森ならでは。本作で森はキネマ旬報ベスト・テン男優賞の初代受賞者に。
  • レビューから
  • 森雅之は、知的だがしかしどこまでも深い淵に落ちていきそうな暗いまなざしで、男の実在感を出す。高峰秀子は、その前に出ると男は何も言えなくなる位に強いのに、実は男と共にいなければ誰よりも弱く寂しい、という愛すべき女を活写する。
  • わが生涯のかがやける日
  • 親の仇とは知らずに愛し合うようになった男女の運命を描いたドラマ。森が演じるのは終戦直前に大臣を暗殺し、今は落ちぶれてギャングの手先となった元青年将校。山口淑子とのキスシーンは、当時大きな話題を呼んだ。
  • レビューから
  • 森雅之はインテリ役が多いのだが、今作のようなやくざな役もよく似合う。滝沢修のメフィストのようなやくざが素晴らしい。
  • 悪い奴ほどよく眠る
  • 汚職事件に巻き込まれて自殺した父親の復讐を目論む青年の姿を描いたサスペンス。黒澤作品で三度目の共演となった三船敏郎が主人公を演じ、父親を自殺に追い込んだ公団幹部役の森との対比がドラマを盛り上げる。
  • レビューから
  • 森雅之のメイクと演技に脱帽する。あの純真で美しい「白痴」で見事な演技をした新劇俳優とは思えない悪役ぶり。びっくりした。

略歴

1931.8.29‐1969.7.17
京都府京都市生まれ。誕生の翌年、関西の歌舞伎俳優・市川九団次の養子になり、46年に初舞台を踏む。51年、市川寿海の養子になって八世・市川雷蔵を襲名。54年、大映に入社して「花の白虎隊」で映画デビュー。翌55年には溝口健二監督の「新・平家物語」で平清盛を気魄たっぷりに演じ、大映を担うスターへと成長する。以降は全12本作られた「眠狂四郎」を始め、「忍びの者」、「若親分」、「陸軍中野学校」の各シリーズでヒットを飛ばし、市川崑監督の「炎上」(58)ではその演技を高く評価された。また三隅研次監督と組んだ「斬る」(62)、「剣」(64)、「剣鬼」(65)の“剣三部作”も様式美溢れる傑作として名高い。だが演技者として充実の時を迎えた69年、直腸ガンによって37歳の若さで急逝した。

ここがすごい!

デビューから15年、短くも華々しい俳優人生を駆け抜けた60年代大映の看板スター。1954年の「花の白虎隊」でともにデビューした勝新太郎が長い雌伏の時を過ごしたのに対して、雷蔵は早々に正統派の美男子スターとして活躍する。4年目に「炎上」(58)で各映画賞を総なめにしてからは、人気、実力を兼ね備えた映画スターとして、主演作が続々とシリーズ化。出演作の大半は時代劇ながら、若殿様から稀代の美男子・光源氏、虚無の剣士・眠狂四郎まで、歌舞伎で鍛えた演技力を武器に多彩な役を演じ分ける。特に、その清々しさや凛々しさは悲劇的な役を演じることで際立った。その一方で、「ぼんち」(60)、「陸軍中野学校」シリーズ(66~68)など、現代劇も好評を博し、勝新太郎との二枚看板で60年代の大映を支えた。

これは必見 KINENOTEおすすめの3本
  • 眠狂四郎殺法帖
  • 虚無の剣士・眠狂四郎を演じて全12作が製作されたシリーズ第1弾。狂四郎役を望んだ雷蔵は、自ら原作者と交渉。必殺技“円月殺法”をどうするのかと問われ、後日、自ら考えた円月殺法を披露して理解を得たという。
  • レビューから
  • ニヒルな剣客眠狂四郎を演じるには雷蔵以外は考えられない。座頭市が勝新以外考えられないのと同様である。それだけこのどこか覚めた、しかし心の底には冷たい火がともっているような演技は、雷蔵の十八番とするところだろう。
  • 炎上
  • デビューから4年、新境地を切り開こうとした雷蔵は、反対する会社を説得して現代劇に初挑戦。その意気込みは高く、撮影前には大相撲の横綱を招いて断髪式を行ったほど。結果、各映画賞を総なめする成功を収めた。
  • レビューから
  • 物語を通して主人公・溝口(市川雷蔵)の全身からにじみ出る絶望に、打たれました。
  • 新・平家物語
  • 吉川英二の小説を溝口健二監督が映画化。自らの出生の秘密を知り、貴族社会に抗おうとする平清盛の青年期を描く。デビュー2年目にして清盛を溌剌と演じ切った雷蔵は、本作のヒットでスターの地位を手に入れた。
  • レビューから
  • 自分が上皇の息子という出自を知った雷蔵が、その後も武士道に生きる不器用な父親に力を貸す彼の強さと優しさが見どころ。

略歴

1931.11.29‐1997.6.21
東京生まれ。父は長唄師匠の杵屋勝東治で、兄は若山富三郎。誘いを受けて大映に入社し、「花の白虎隊」(54)で市川雷蔵と共にデビューした。だが白塗りの二枚目時代劇俳優として個性を発揮できないまま、数年を過ごす。悪逆非道の男に扮した「不知火検校」(60)でその人間臭い魅力が開花し、「座頭市」シリーズによって人気爆発。「悪名」、「兵隊やくざ」の各シリーズも好評を博し、大映を担うスターに急成長した。67年には勝プロダクションを設立し、「顔役」(71)で監督業にも進出。その後は79年の黒澤明監督作「影武者」の主役降板、90年の麻薬密輸入事件での逮捕など世間を騒がせたが、演技に懸けたその人生と作品は、今も多くの映画人に影響を与えている。

ここがすごい!

個性的なアンチヒーローを、人間味豊かに演じて大映を支えたスター。「花の白虎隊」(54)で市川雷蔵と一緒にデビューしたものの、二枚目路線で売り出した当初はこれといったヒット作も生まれず苦労が続く。1960年代に入ると、義理に厚いやくざを演じた「悪名」、盲目だが居合切りの達人・座頭市、はみ出し者の兵隊を演じた「兵隊やくざ」など、アンチヒーローに活路を見出し、看板スターに躍り出た。映画に対する情熱は人一倍で、後年は独立プロ“勝プロ”を設立し、テレビも含めて「座頭市」シリーズなどで監督業にも進出。天才的な才能を発揮して優れた作品を生み出す一方で、予算やスケジュールを度外視した創作に対する姿勢は、活躍の場を狭める結果ともなった。

これは必見 KINENOTEおすすめの3本
  • 悪名(1961)
  • その後、各社で量産され、ブームを呼ぶやくざ映画の先駆けとも言える作品で、勝演じる朝吉親分と弟分・田宮二郎のコンビが悪を懲らしめるのが毎回のお約束。勝の最初のヒット作となり、全16作が製作された。
  • レビューから
  • 座頭市より前の勝新太郎って初めて見たかも。ガラが悪くて、けんかっ早く、女好きな感じがあるけど、なんだろうこの情感は。すごい才能と、可愛さと、不思議なはかなさのある魅力的な役者さんですね。
  • 座頭市物語
  • 勝の代名詞とも言えるシリーズ。大映倒産後も東宝、松竹の配給で全26作が作られたほか、70年代にテレビ版4シリーズが放送された。盲目の演技と、その状態から目にも止まらぬ早さで繰り出される居合切りは圧巻。
  • レビューから
  • やっぱり勝新太郎の演じる市の強さだけでなく、謙虚さと豪快さの緩急つけたキャラクターが魅力なのが、その後もシリーズ化し国や時代を超えて愛される理由なのでしょう。
  • 兵隊やくざ
  • 中国戦線を舞台に、勝演じるヤクザ上がりの兵隊・大宮とインテリ上等兵・有田(田村高廣)コンビの活躍を描いたコメディ風の作品。「悪名」、「座頭市」と並行して全9作が製作され、勝はこの時期、大車輪の活躍。
  • レビューから
  • なんといっても勝新太郎が聞かん坊の小学生みたいにかわいすぎる!よく殴られ、殴られ、こんなに印象に残るキャラクターも珍しい。

略歴

1931.2.16‐2014.11.10
福岡県中間市生まれ。明治大学卒業後、東映専務のマキノ光雄にスカウトされ、55年に東映入社。「電光空手打ち」(56)で映画デビューし、現代劇の青春スターとして売り出した。64年、主演作「日本侠客伝」シリーズで人気が爆発。「昭和残侠伝」シリーズと併せ、任侠映画スターとして一時代を築き、一方で現代アクション「網走番外地」シリーズでも好評を得る。76年に東映を離れてからは、「君よ憤怒の河を渡れ」、「八甲田山」(77)、「野性の証明」(78)などの大作に主演し、また山田洋次監督の「幸福の黄色いハンカチ」(77)、降旗康男監督と組んだ「駅/STATION」(81)では多くの映画賞の主演賞に輝いた。降旗監督とは以後もコンビで秀作を連発。生涯205本の映画に出演し、そのほとんどが主演作という不世出のスターであった。

ここがすごい!

任侠映画のスターから国民的俳優へ。1956年のデビュー以来、様々な作品を経て63年の「人生劇場 飛車角」をきっかけに任侠映画のスターとして活躍。現代アクションの「網走番外地」(65)と並行して主演作が次々とシリーズ化され、“健さん”の愛称で親しまれる。時折しも、学生運動華やかなりし頃で、渦中の世代の熱狂的な支持を受けた。やくざ映画が“実録路線”へ転向した70年代中盤に東映を退社してフリーに。生涯の出演作205本のうち、ここまでで180本以上。以後は大作を中心に主演する国民的俳優としての階段を上り始め、山田洋次監督や降旗康男監督と組んだ諸作を通じて、寡黙でストイックな男のイメージが定着していった。なお、純和風の印象が強いものの、「ブラック・レイン」(89)ほか、海外作品にも出演経験がある。

これは必見 KINENOTEおすすめの3本
  • 幸福の黄色いハンカチ
  • 健さんを国民的俳優の地位に押し上げた代表作の一つだが、原作者は意外にもアメリカ人。文化勲章受章時に自らのキャリアを“ほとんどは前科者”と語った通り、本作でも刑務所帰りの男を抑えた芝居で演じている。
  • レビューから
  • 高倉健さんだからこそ成立する主人公、明らかにその存在感を意識したストーリー。こんな単純なラブストーリーは今はもう存在しないけど、それでいいよな、と思わせる映画。
  • 網走番外地(1965)
  • 米映画「手錠のままの脱獄」(58)を換骨奪胎した現代アクション。当初は会社の期待も低く、モノクロで製作されたが、大ヒットにより全18作のシリーズへ。当時30代半ばで生きのいい健さんは主題歌も熱唱。
  • レビューから
  • 刑事でも市井に生きる実直な人でもない若い健さんの姿は、メインタイトルや途中で挿入される健さんの歌声も含めて、今見るとちょっと新鮮かも。
  • 駅/STATION
  • 降旗康男監督とのコンビ作20本のうち、13本目の映画。本作以降、しばらく古巣の東映を離れ、東宝を拠点に活動する。健さんはオリンピックの射撃選手だった刑事役で、華やかな女優人たちとの共演を披露している。
  • レビューから
  • 「幸福の黄色いハンカチ」で共演した武田鉄矢が「健さんは富士山のような人」と言ったところ、「富士山は寂しいぞ」と返したという。そうした孤独を内に秘め、言い訳はせず寡黙に耐える姿からは、厳しさと同時に限りない優しさを感じ取ることができる。

略歴

1940.2.29‐2011.7.19
東京生まれ。63年、俳優座養成所に15期生として入所。68年、「復讐の歌が聞こえる」で映画デビュー、翌年の「反逆のメロディー」で映画俳優として開花、その後は無頼なアウトロー役で人気を集めた。黒木和雄監督の「竜馬暗殺」(74)で斬新な坂本龍馬像を造型し、以降黒木監督とは多くの映画で名コンビを組む。他にも「ツィゴイネルワイゼン」(80)の鈴木清順、「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」(85)の森﨑東、「どついたるねん」(89)の阪本順治、「われに撃つ用意あり」(90)の若松孝二など、ある種の共犯関係によって彼と代表作を生み出した監督は多い。自ら企画した遺作「大鹿村騒動記」(11)まで映画を“遊び”と呼び、俳優として本気で遊びつくした71年の生涯だった。

ここがすごい!

反骨精神あふれるアウトロー的なキャラクターを持ち味に、1970年代以降の日本映画低迷期に躍動した。本人が“実質的なデビュー作”と語る「反逆のメロディー」(70)のオファーを受けた際は、出演する気がなかったため、やくざ映画にも関わらず上下ジーンズという格好で監督に会いに行く。ところが、これが逆に気に入られて起用が決定し、やくざ映画の常識を打ち破る作品を作り上げた。以来、組織や権力からはみ出した役を次々と演じてイメージを確立。時代劇にも出演したが、「無宿人御子神の丈吉」シリーズ(72~73)や「浪人街」(90)など、ここでも渡世人や浪人など、体制の外側の人間にこだわり続けた。アウトローの宿命として悲壮感漂う場面も少なくなかったが、どんな時でもどこか颯爽とした格好よさと色気が滲み出ていた。

これは必見 KINENOTEおすすめの3本
  • 竜馬暗殺
  • 坂本竜馬が暗殺されるまでの数日間を描いた時代劇。本作で原田は、自らの命が狙われていることを知りながらも女との情事に耽り、女装して踊りに紛れ込むなど、飄々とした演技でこれまでにない竜馬像を作り上げた。
  • レビューから
  • 竜馬役の原田芳雄さんと、慎太郎役の石橋蓮司の若いことには驚きです。モノクロということもあり想像力を掻き立てられ、一層現実味を増します。
  • 寝盗られ宗介
  • ドサ周りの旅芝居一座が巻き起こす騒動を描いたつかこうへいの舞台を映画化したコメディ。若松孝二監督は、原田の愉快な一面を生かそうとして本作を作ったという。クライマックスでは、女装して『愛の賛歌』を熱唱。
  • レビューから
  • 原田さんの『愛の賛歌』に、泣いた。もう原田さんに、会えないと実感してさらに泣けた。
  • ツィゴイネルワイゼン
  • 鈴木清順監督独特の映像美が横溢する中、1枚のレコードを巡る2組の夫婦の摩訶不思議な交流が描かれる。原田は共演の藤田敏八、大谷直子らと対比する形で、ボサボサの髪に髭面、よれよれの和服姿で存在感を発揮。
  • レビューから
  • 鈴木清順の独特の世界、美しさと妖艶さ。そして、原田芳雄、大谷直子らの面白さ。

略歴

1950.9.21‐1989.11.6
山口県下関市生まれ。高校卒業後に演技の勉強を始め、72年に文学座付属演劇研究所へ12期生として入所。翌年、TV『太陽にほえろ!』のジーパン刑事役に抜擢され、野性的な風貌と豪快なアクションで人気を得る。同年には「狼の紋章」で映画デビューも果たした。村川透監督と組んだ「遊戯」シリーズや「蘇える金狼」(79)、「野獣死すべし」(80)で70年代を代表するアクション・スターへと成長。83年には森田芳光監督の「家族ゲーム」でハードボイルドな家庭教師に扮し、その演技で各映画賞主演賞を総なめにした。以降は演技派としての色彩を強める一方で、「ブラック・レイン」(89)でハリウッド映画にも進出。だが膀胱ガンにより、39歳の若さで逝去した。息子の龍平、翔太も俳優。

ここがすごい!

長身と長い手足が醸し出す独特の佇まいと、静と動の二面性ある演技で強烈な印象を残した80年代のスター。頭角を現したのは、村川透監督と組んだハードボイルド映画。「最も危険な遊戯」(78)で演じた一匹狼の殺し屋、「野獣死すべし」(80)の殺人鬼など、狂気を秘めた人物を唯一無二の演技で表現。後に文芸作品にも進出し、アクションだけではない演技力を広く認められる。自分にも他人にも高いハードルを課すことで知られ、周囲との衝突も少なくなかったが、スタッフや共演者を自宅に招く親分肌の一面も持ち合わせていた。ハリウッド映画「ブラック・レイン」(89)への出演で更なる飛躍を期待された直後に亡くなるが、その遺伝子は俳優として活躍する2人の息子、龍平と翔太に着実に受け継がれている。

これは必見 KINENOTEおすすめの3本
  • ブラック・レイン
  • 大阪を舞台に、アメリカから来た刑事と凶悪なやくざの対決を描く。撮影当時、既に病に冒されていた松田だが、初期のハードボイルド作品を彷彿とさせる強烈な演技で、ハリウッドスターに劣らぬ存在感を発揮している。
  • レビューから
  • 激しいアクションもスタントの吹き替えなしに演じている。全身の贅肉をそぎおとしたカミソリのような体躯で、正に鬼気迫る演技が凄まじい。 本当に、憎たらしい佐藤が乗り移ったようだ。いや、佐藤そのものが松田優作だ。
  • 家族ゲーム
  • 次男の高校受験を控えた一家と、型破りな家庭教師の交流を描いたドラマ。文芸作品への移行を目指していた松田は、新鋭・森田芳光の脚本を気に入り、自ら出演を志願。肩の力を抜いた演技で、数々の映画賞を受賞した。
  • レビューから
  • 主演の松田優作の役者としての素晴らしさが垣間見れた作品でした。ちょっと変わった性格の家庭教師で雰囲気は根暗な感じだが暗いながらの笑いも忘れない。これだけ見ていてもくすくす笑えるような楽しい作品でした。
  • 探偵物語(1983)
  • 殺人事件に巻き込まれた女子大生を助けて捜査に乗り出す私立探偵を好演。薬師丸ひろ子主演のアイドル映画で、個性の強い役ではないが、松田は“すき間を生かす”根岸吉太郎監督の演出が気持ちよかったと語っている。
  • レビューから
  • 本作の収穫は、やはり優作だ。事前によれよれの中年男と宣伝されていたが、結構いい服着ていたりしていて、よれよれではない。もっと、コロンボのような風体の方が良かった。だが、優作の演技だけはずば抜けている。

略歴

1956.1.1‐
長崎県諫早市生まれ。78年、無名塾に入塾し、同年初舞台を踏む。83年、NHK大河ドラマ『徳川家康』の織田信長役で注目を浴びる。映画には「闇の狩人」(79)に初出演し、伊丹十三監督の「タンポポ」(85)からは映画出演にも力を入れたが、80年代はTVでの人気が目立った。95年、「KAMIKAZE TAXI」のペルーから来たタクシー運転手役が絶賛され、翌年の「Shall weダンス?」で各映画賞の主演賞を総なめにした。この96年以降、日本アカデミー賞で7年連続優秀主演男優賞を得て、トップスターの地位を確立。今村昌平の「うなぎ」(97)、黒沢清の「CURE」(97)、青山真治の「EUREKA」(01)など、日本映画史に残る名編で圧倒的な存在感を披露した。

ここがすごい!

仲代達矢門下から現れた平成の日本映画界を支える演技派俳優。仲代達矢が主宰する俳優養成所“無名塾”で鍛えた演技力を武器に頭角を現す。若い頃から重厚な芝居が持ち味で、「オーロラの下で」(90)の猟師やテレビ時代劇での織田信長、宮本武蔵といった力感溢れる人物を得意としてきた。その演技力を買われて原田眞人監督や黒沢清監督の作品で活躍する一方、「Shall We ダンス?」(96)でコミカルな芝居に開眼するなど、次第に演技の幅を広げて行く。50代に入ると演技にますます磨きがかかり、「最後の忠臣蔵」(10)や「蜩の記」(13)では枯れた味わいも披露。上の世代が次々と第一線を退き、同世代の渡辺謙が活動の中心を海外に移す状況の下、スクリーン映えのする骨太な演技で国内の映画界を支え続けている。

これは必見 KINENOTEおすすめの3本
  • Shall We ダンス?(1996)
  • 後にハリウッドでもリメイクされた大ヒットコメディ。竹中直人や渡辺えり子らアクの強い俳優に囲まれた役所は、社交ダンスとの出会いによって人生を見つめ直す平凡なサラリーマンを、抑えた演技で好演している。
  • レビューから
  • 役所広司の目がだんだんと生き生きしてくる様が何とも言えない。派手でも豪華でなくても自分だけのちょっとした喜びを見つけた時に人は生きがいを感じられる。
  • KAMIKAZE TAXI
  • 何度もコンビを組んでいる原田眞人監督の作品。役所が演じるのは、悪徳政治家の金を奪ったチンピラとともに逃走するペルー育ちの日系人タクシー運転手。表面上は穏やかながら、内に怒りを秘めた人物を力強く表現。
  • レビューから
  • 朴訥とした佇まいのなかにも狂気と侠気を孕んだ日系ペルー人のタクシードライバー。そんな一風変わった役どころを見事に演じきった役所広司のこなれた演技が印象に残る映画だった。
  • 渇き。(2014)
  • 妻と離婚して自暴自棄な生活を送る中で、失踪した娘の行方を追うロクデナシの元刑事を熱演。中島哲也監督によるポップな演出、強烈な共演陣に囲まれながらも、それらを凌駕する力強い演技で物語を牽引してゆく。
  • レビューから
  • 徹頭徹尾、役所広司の映画。アカデミー賞級の演技をほぼ独壇場で見せつけ、粗暴で過激な父親を猛猛と演じ切っている。彼こそバケモノ役者だと思った。

略歴

1923.1.20‐2013.4.14
群馬県太田市生まれ。中学時代から職業を転々とし、50年末に松竹大船撮影所の研究生になる。木下惠介監督の「善魔」(51)の主役として映画デビュー。将来を嘱望されたが、東宝「戦国無頼」(52)に出演したことが問題となり、松竹を解雇される。その後は日活で「警察日記」(55)や「ビルマの竪琴」(56)、東映では「大いなる旅路」(59)や「飢餓海峡」(64)など、そのリアリティ溢れる演技で存在感を示し、今村昌平監督の「神々の深い欲望」(68)など、独立プロの作品にも積極的に参加。86年に自ら監督した「親鸞・白い道」は、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。88年からは西田敏行主演のコメディ「釣りバカ日誌」シリーズの“スーさん”役で新境地を開き、09年まで全22作に出演した。

ここがすごい!

体当たりの演技で、善悪を併せ持つ人間の本質をスクリーンに焼き付けた稀代の名優。様々な職業を転々とした後、20代後半で俳優になり、結婚と離婚を繰り返した波乱万丈な経歴ゆえか、各社の専属俳優にはない強烈な存在感を発揮。その演技に対する本気度を伝える逸話は、多々残されている。元軍人の老境を演じるために実際に歯を抜いた「異母兄弟」(57)、鉱毒の被害を役人に訴える場面で土を食べた「襤褸の旗」(74)等々……。数々の熱演により、映画会社が自社俳優の他社作品出演を禁じた“五社協定”をものともせずに各社を渡り歩き、名優としての地位を確立。晩年には「釣りバカ日誌」シリーズで好々爺然とした佇まいを見せたが、それも元々は“喜劇に挑戦してみよう”という演技に対する意欲が招いた結果だった。

これは必見 KINENOTEおすすめの3本
  • 飢餓海峡
  • 終戦直後に起こった殺人事件を発端に、人間の業の深さを抉り出したミステリー。三國は、殺人事件の容疑者として怯える前半と、堂々たる実業家として振る舞う後半を演じ分け、圧倒的な存在感で物語を牽引した。
  • レビューから
  • 三国連太郎が演じる犬飼多吉の貧困から抜け出そうとする執念はすさまじく、左幸子の杉戸八重の貧困の中でも失われない純な心とは対照的だ。
  • 息子(1991)
  • 田舎の父親と東京でフリーターとして生活する息子の交流を描いた山田洋次監督のドラマ。岩手の山奥で独り暮らしを送る父親役の三國は、当時20代の永瀬正敏や和久井映見を引き立てつつ、味わい深い演技を披露する。
  • レビューから
  • 三國連太郎の朴訥とした父親と少しやんちゃな永瀬正敏の不器用なやり取りが微笑ましい。じんわりと心温まる作品で父親孝行をしたくなる。
  • 利休
  • 戦国時代の権力者・豊臣秀吉と茶人・千利休の確執を描いた時代劇。美術と衣装で11億円もの巨費が投じられた大作だが、秀吉役の山崎務と利休を演じた三國の存在が、荘厳な映像美に人間ドラマとしての重みを加えた。
  • レビューから
  • 三國連太郎が演じる利休には生け花の草月流家元としての顔も持つ監督の茶道に対する美学が色濃く反映されている。

略歴

1905.3.12‐1982.2.11
兵庫県朝来郡生野町生まれ。20年代に新劇俳優として活動を始め、様々な劇団を転々。34年に新興キネマ京都撮影所に入り、翌年に伊丹万作監督の「忠次売出す」で映画デビュー。伊丹監督の「赤西蛎太」(36)、溝口健二監督の「浪華悲歌」(36)などでの好演を経て、43年に黒澤明監督の処女作「姿三四郎」に村井半助役で出演。以降、「影武者」(80)まで21本の黒澤映画に出演。中でもガンを宣告された、実直な中年男を演じた主演作「生きる」(52)の名演は忘れ難い。他にもプロ野球の監督を味わい深く演じた「男ありて」(55)、「ゴジラ」(54)の山根博士など、役の大小に関わらず安定感のある貫禄溢れる彼の演技は、作品の厚みになって日本映画を支えた。

ここがすごい!

黒澤明を支えたいぶし銀の名優。黒澤の監督デビュー作「姿三四郎」(43)以来、全30作品(うち、志村没後が4作品)のうち21作品に出演。「酔いどれ天使」(48)の飲んだくれ医師から「七人の侍」(54)の侍たちのリーダー、勘兵衛まで、あらゆる人物を厚みのある芝居で存在感たっぷりに演じた。志村の死に際し、黒澤は“代わりのきかない貴重な俳優だった”との言葉を残している。また、16本に出演して共に黒澤を支えた三船敏郎とは公私に渡る付き合いがあり、三船は志村夫人を“おばちゃん”と呼ぶなど、子どものない志村夫妻は三船を息子のように可愛がったという。黒澤以外の出演作も多数あり、「ゴジラ」(54)を始めとした東宝特撮映画や「男はつらいよ」シリーズで前田吟が演じた博の父親役などでも強い印象を残した。

これは必見 KINENOTEおすすめの3本
  • 生きる(1952)
  • 単独主演となった志村は、自宅でもがん患者になり切って食事を減らしていたところ、撮影前に盲腸炎を患い、さらに体重が減る結果に。その努力が実り、何の特徴もない平凡な市役所の課長を人間味豊かに演じ切った。
  • レビューから
  • 志村喬が「命短し恋せよ乙女」と歌うのを聞いていると、女性に対し今を大事に恋をしようという以外に、全ての人に、今、何かに懸命になれという思いが込められているような気がした。
  • 鴛鴦歌合戦
  • 黒澤のデビュー前、戦前の日活に所属していた当時に出演した時代劇オペレッタ。当時30代半ばの志村は、主演の片岡千恵蔵扮する浪人と同じ貧乏長屋で傘貼りを営む浪人役で、コミカルな芝居と歌声を披露している。
  • レビューから
  • 志村喬は『生きる』でも美声を披露していたけれどこちらでもとってもいい声で何曲も披露していて、思わず聞きほれてしまった。実際にレコード会社からスカウトがきたというエピソードも納得だ。
  • 醜聞(スキャンダル)
  • スキャンダル記事をでっち上げた出版社を訴える画家に雇われながらも、相手に買収されてしまう小心者の悪徳弁護士を、背中を丸めて卑屈そうに演じた。後に志村は、“この作品で演じた役が一番好きだ”と語っている。
  • レビューから
  • スキャンダルを描く映画だが、黒澤監督自身が言っている通り、この映画の主人公は志村喬演じる弱々しい弁護士の役だ。この弁護士の苦悩が最後に果たす役割は、弱者心理である。
表紙でふりかえるキネマ旬報

オールタイム・ベスト映画遺産 日本映画男優・女優100
(12月16日発売/B5判/1800円+税)

映画人・評論家・文化人の方々181名のアンケートによる、120年におよぶ映画の歴史の中から、ベストと思われる日本映画の男優、女優ランキングを収録した永久保存版の一冊。『キネマ旬報』創刊95周年記念の第三弾。

  • 男優
  • 女優