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EIGA, MON AMOUR

映画検定1級合格者の松﨑健夫さんと、映画検定(それも1級!)を今年はじめて受験する大谷ノブ彦さん。この、映画検定を基準にすると好対照な「映画検定天才塾!」コンビに、最終回である今回は、KINENOTEユーザーから届いた質問の数々(映画検定への思いから、好きな映画・監督まで!)を思い切ってぶつけちゃいます。

取材・文=小山田桐子

今回のテーマ:製作技術面から映画を学ぶ

編集部
さて、次はちょっと難しいというか、大きな質問です。

日本で映画を学校の必修科目にするためにはどうしたらいいと思いますか。

編集部
映画検定も次世代に映画文化を引き継ぎたいというところからはじまっているものなのですが、学校で映画を教えることについて、お二人はどう思われますか。
松﨑
義務教育にする必要はないと思います。勉強ではないので。ただ、学校で映画を観せることは必要だと思うので、図書館司書みたいな感じで、映画の司書がいたらいいんじゃないのかな。自分の趣味とかではなく、ちゃんと意図がある、キュレーションしたものとして映画を観せることが必要だと思うんです。その役目を、たとえば映画検定に受かった人たちができたらいいんじゃないのかなあ。
大谷
僕も学校で映画を観る機会を与えるのってすげえ大事だと思うんです。映画って価値観は多様なんだってことが、一番伝わるものだと思うから。未成年の事件が社会問題になってますが、「人を殺してみたい」とか「死んでみたい」とか、そういう狂気みたいなものって誰の中にもあると思うんですよ。でも、それを実行しない理由は、別のアウトプットの仕方があるからだと思うんですよね。「人を殺したい」というような狂気を、人を楽しませるものに転換できているのが映画だと僕は思うから。猟奇殺人を描いた作品を観て、猟奇殺人をする人なんてほとんどいません。逆ですから。空想の世界で狂気を操作する方法を教えてあげるというのも大事じゃないかなあって、僕は思うんですけどね。そのためには、僕は文部省推奨の映画を観せても意味ないと思うんですよ。善悪二元論じゃない映画を学校で観せたらいいと思う。そういう作品のセレクトって、なかなか子どもは自分じゃできないと思うから、やっぱり松﨑さんの言うように、キュレーションできる人がいたらいいのかなと思いますね。
編集部
次は、映画検定1級合格者でおられる松﨑さんへの質問です。

映画検定に合格して一番よかったことはなんですか?

松﨑
僕は小学校の時から映画評論家になりたくて、卒業文集にも、「第二の淀川長治になる」って書いているんですよ。映画検定がきっかけで夢が叶ったというのは、よかったことですね。ただ、誤解してほしくないのは、映画検定を受けたら映画評論家になれるってわけではないんです。映画検定をきっかけに、実際に仲間たちとの飲み会や映画祭など、いろんな場に足を運ぶことで、映画関係者をはじめ様々な方と知り合うことができた。それが少しずつつながって、ここまでたどり着いたんです。だから映画検定だけで映画評論家になったわけではないんですけど、一方で、映画検定がなかったらここにいないわけで、僕にとって本当に夢を叶える種という感じです。
編集部
なるほど。では、それを受けて、大谷さんへの質問です。

1級に合格したら何をしたいですか。

大谷
合格することで、“映画検定1級芸人”って記号ができるわけじゃないですか。僕の「好きだ」って思いが少しは力を持つようになって、好きな映画をより多くの人が観てくれるようになったらいいなと思いますね。それが一番大事かな。これまでの連載の中では「1級を取って仕事を増やすぞ」なんて言ってますけど、それって実はどうでもいい(笑)。僕は検定を受けること自体が面白いと思ってますから。みんなね、何かを求め過ぎなの、検定を受けるってなった時に(笑)。
松﨑
確かに。僕もね、結果的に映画評論家になったけど、なれると思って受けたんじゃないですから。
大谷
結局、“松﨑さんが映画評論家を選んだ”んじゃないんです。“映画評論家が松﨑さんを選んだ”んです。絶対そうなんですよ。これ読んでるあなたもそうなんです。自分の仕事を自分が選んだと思ってるでしょ。絶対違うから。その仕事にあなたが選ばれた。だから頑張るし、楽しむんです……つい話がちょっと反れましたが、つまりは、検定で何かを得ようと考えるんじゃなくて、検定を通していかに映画をさらに楽しむか、いかに検定自体を楽しむかを考えた方が絶対いいと思いますけどねえ。その結果として何かがついてきたらいいなあ、とは思いますけど。
編集部
ありがとうございます。