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EIGA, MON AMOUR

映画検定の試験日・11/30まで、あと2か月。本連載での例題の出題もついにラストです。そんな今回のテーマは「映画製作技術」。キネトスコープ、シネマトグラフ、テクニカラー、イーストマンカラー……「何ソレ、呪文? 難しそう……」と危ぶむなかれ。以上のような必須単語の数々を、松﨑塾長がいつも通り、分かりやす~く解説してくれます。

取材・文=小山田桐子

今回のテーマ:製作技術面から映画を学ぶ

以下の文章の空欄に当てはまる用語の正しい組み合わせを選びなさい。

映画の誕生を厳密に規定することは難しいが、映像の投影や動く写真という試は19世紀末の欧米で同時多発的に開発・発明が行われていた。トーマス・エジソンは<①>を開発し、1894年4月にニューヨークで公開。翌年、スクラダノフスキー兄弟による<②>がドイツで1895年11月に一般公開され、同年12月にはリュミエール兄弟が<③>をパリで一般公開。さらにトーマス・エジソンは1896年4月に<④>を正式上映している。

  • (ア) ①キネトスコープ ②ビオスコープ ③シネマトグラフ ④ヴァイタスコープ
  • (イ) ①シネマトグラフ ②ビオスコープ ③キネトスコープ ④ヴァイタスコープ
  • (ウ) ①キネトスコープ ②シネマトグラフ ③ヴァイタスコープ ④ビオスコープ
  • (エ) ①シネマトグラフ ②ヴァイタスコープ ③ビオスコープ ④キネトスコープ
大谷
え~、全然わかんない(笑)。でも、リュミエールってエポックメイキングな発明をした人だった記憶はなんとなくあるんですよね。ってことは、一番聞いたことのある言葉を選べばいいんじゃないかな。そうなると、キネトスコープかなあ……なので、(イ)です。
松﨑
正解はですね、(ア)です。シネマトグラフって、聞いたことないですか。
大谷
言われてみれば……聞いたことあるような(笑)。
松﨑
この問題、実は、メジャーどころの2つ、シネマトグラフとキネトスコープさえ覚えていれば、答えられるんですよ。「キネトスコープ」は、箱の中をのぞくと映像が見られるもの。「スコープ」には、顕微鏡みたいにのぞくものというイメージ、ないですか? 映画は最初期、“のぞき”みたいなものだったことを知っていれば、覚えやすい。一方、「シネマトグラフ」は、リュミエール兄弟が発明した、撮影と映写の機能を持つ複合映写機です。
大谷
頭に入りました。次にこの問題が出たら、完全に行けます!
松﨑
今回の問題で分かるのは、映画は常に、よりお金をたくさん稼げるように技術革新を繰り返してきた、ということです。映画の上映方式も、一人でのぞき込むものから、不特定多数で観るものへと変わったことで、いっぺんにお金が稼げるようになった。
大谷
“興行”になったわけですね。
松﨑
そうなんです。3Dもカラーも音も含め、技術の革新というのはすべて、お客さんを呼んで、お金を儲けるためにあるように僕には思えるんです。新しい技術で他と差別化することによってお金を得て、そのお金でまた技術革新をする。その繰り返しで、今の映画があるんですね。
大谷
でも、もう結構、頭打ちですよね。
松﨑
そう、次がないんです。4Dだ何だと言われてますけど、なかなかコレというものがない。
大谷
昔の映画は、結局、大衆文化・風俗文化だったってことですよね。要は、刺激があるから人が集まった。ディスコなんかと同じですよね。
松﨑
そうです。だから、裸を入れるとか、アクションが派手とか、そういう単純なことでよかった。
大谷
映画だけでなく、ラジオやテレビや音楽もそうですが、新しい刺激ばっかりをどんどん求めていくと、新しく台頭した大衆文化の新鮮さには、なかなか太刀打ちできないんですよね。今の大衆文化といえば、SNSなどのネットが中心ですけど、映画はそれらとも勝負しなきゃいけない。厳しい時代です。
松﨑
結果的に、作品で勝負するしかないってことなんだと思います。「風と共に去りぬ」や「オズの魔法使」が今も名作として残っている理由は、当時カラーで珍しかったからなのかっていうと、そうじゃない。普遍的な価値のある名作だからですよね。やっぱり、映画にとって大事なのは物語やスターの魅力であって、それらなしには、人を惹きつけ続けることは難しいのだと思います。
大谷
そうなると、観る側のリテラシーも、もっと必要ですよね。刺激だけじゃなく、映画のよさをちゃんと理解できる人の数が、もっともっと増えないと……あ、そうか! だから、映画検定のようなものを通し、映画を深掘りしたり、知識を深めることの面白さを広めていかないといけないんですね。そうしないと、映画産業自体が死んでしまう。
松﨑
本当に、そうだと思いますね。
大谷
……いやあ、まとめますね、俺(笑)。
松﨑
さすが、名司会者(笑)。
大谷
改めて、映画検定1級への意欲がわきました。今日全問正解できなかった悔しさは、11月の試験本番で晴らします!
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