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EIGA, MON AMOUR

「映画運動」、それは、映画を学ぶ上では避けては通れないターム。ドイツ表現主義、ネオ・レアリズモ、ヌーヴェル・ヴァーグ、アメリカン・ニューシネマ、ドグマ95……映画史上の各時代においては、さまざまな映画運動が誕生してきました。一見、それぞれは独立しているように見えますが……果たして本当にそうなの? 教えて、分かるひとー! というわけで、松﨑先生による映画講座・第3回目を開講します。

取材・文=小山田桐子

今回のテーマ:映画運動の流れから映画を学ぶ

“ヌーヴェル・ヴァーグ”に関する記述で正しくないものを選びなさい。

大谷
「勝手にしやがれ」は、たしか監督賞とってますよね。『カイエ・デュ・シネマ』の記述も正しいと思う。“右岸派”“左岸派”って言葉は全然知らないけど、「死刑台のエレベーター」の音楽はマイルス・デイヴィスですよね。だから答えは(エ)。
松﨑
はい、正解です。選択肢の(ア)にあるように、映画評論家のような、スタジオと直接関係ない人たちが映画監督になるという流れのもとは、ヌーヴェル・ヴァーグにあるんですよね。ヌーヴェル・ヴァーグがアメリカン・ニューシネマに繋がっていく。
大谷
ハッピーエンドじゃない結末とかも、まさに、ヌーヴェル・ヴァーグの影響ですよね。
松﨑
大谷さんがお答えになったとおり、「死刑台のエレベーター」の音楽を担当したのはマイルス・デイヴィスなんですけど、彼ってアメリカの人じゃないですか。アメリカの人なのにフランス映画の音楽やってるんですよ。
大谷
言われてみれば、たしかにそうだ。
松﨑
新しい映画を作ろうという時に、音楽も新しいものを使おうということになって、いわゆる映画音楽ではない音楽=ジャズを取り入れたんです。そこで、マイルス・デイヴィスというアメリカのミュージシャンを呼んできて、即興で音楽を付けた。
大谷
すごいですよねえ、映像を見せながら、即興でトランペットを吹かせたのを録音したんでしょ。
松﨑
ところで、映画専門の音楽家じゃない人が音楽を担当するってこと、アメリカン・ニューシネマもやってないですか?
大谷
あ、はいはい、「卒業」のサイモンガーファンクルがそうだ。あと、「イージー・ライダー」も!
松﨑
「イージー・ライダー」は、初めてロックだけでサントラを構成した映画ですね。映画音楽ではない音楽を使うことは、予算的にもメリットがありました。その頃、テレビの存在などにより、映画に人が入らなくなり、大作が作れなくなっていたんです。だから、音楽にもあまりお金がかけられない。基本的に、映画音楽を作るのってお金がかかりますからね。オーケストラを使って録音するので、人もいっぱい雇わなきゃいけないから。ところが、既成の音楽だとぐっと少ない予算で済むわけです。
大谷
なるほど、そういう時代の流れも影響して、ニューシネマって生まれてきたんだ。
松﨑
はい。ちなみに、問題に登場したセロニアス・モンクもアメリカのジャズミュージシャンで、「危険な関係」のサントラをやっているんです。ヌーヴェル・ヴァーグという映画運動の中で、フランス人がアメリカのジャズミュージシャンを使ったことを知っているかどうかが、この問題のミソですね。さらに実は、アメリカに影響を与えたヌーヴェル・ヴァーグ自体もいろいろ影響を受けている。それが1級の問題です。
大谷
さらに逆のぼるんですか。俺、これ以上はわかんないですよ……。