『アクターズ・ファイル 永瀬正敏』の発売を記念し、2月中旬、永瀬正敏さんご本人が登壇してのトークショーがTKPシアター柏で行われた。その風貌や役柄から印象づけられている「クールさ」とは見事に裏腹に、場を気遣ってジョークを言い、「ありがたい」という言葉を連発する姿は、まったくもって「温かく、まっすぐなひと」。映画俳優として、ひとりの人間として、あまりに正直に生きている永瀬さんが発する言葉は、会場に集まった全員の胸を、やはり「温かく、まっすぐに」撃ち抜いてしまった。 聞き手:青木眞弥(『アクターズ・ファイル 永瀬正敏』編集者) 取材日:2014年2月16日
今回の本は、表紙とグラビアの写真を荒木経惟さんが撮られました。永瀬さんからリクエストをいただきまして、ご連絡したら即OKで、空いているスケジュールをすぐにいただいたくらいです。荒木さんは、昔からご存知だったんですよね。
そうですね。何度か写真を撮っていただいたり、プライベートでもお会いしたり。荒木さんと森山(大道)さんは、中学の頃から「すごい」と思ってた方ですから。うれしかったです。ありがたい本です。
永瀬さんは「やっぱりフィルムが似合うから」と、モノクロのフィルムで撮影していただいて。紙焼きにしたものが、今印刷所にあるんですけれども、戻ってきたら永瀬さんにお渡ししますので。
欲しい! 自分の写真はあんま欲しくないですけど、荒木さんに撮ってもらったのは、ちょっとね。
箱に「永瀬正敏」と荒木さんが書いてました。
マジですか……それ、何かに使っちゃお(笑)。荒木さんは、お会いするといつも必ず新作の写真集を持ってきてくださって、ご自身のサインと「永瀬」って書いてくれるんですよ。そんなことしてくれる人、荒木さんと草間彌生さんだけです。ありがたいですね……さっきから「ありがたい」しか言ってないな(笑)。この本自体がありがたいんです。
ここで、今回10万字の原稿をまとめてくれた 映画ライターの金原由佳さんを壇上にお呼びしましょう。金原さん、インタビューを終えての感想はいかがですか。
私は永瀬さんと同じ世代で、デビュー当時からずっと観てきました。永瀬さんは気遣いの方です。本音を言うけれど、それをどなたかが聞いて傷つくのはいやということがあって、「これは書かないでくださいね」というのが多かった。結構ライター泣かせなんです(笑)。
僕よりも金原さんの方がよく覚えていらっしゃいました。相米の親父とも、すごく仲良かったですし。何せ、『私立探偵 濱マイク』の本をずっと作っていただいた方で。関係者インタビューで、小泉(今日子)が語ってくれたんですけど、それは金原さんのアイデアですからね。最後に「1人足りなくないですか?」と言われて。「忙しいだろうから……でも、やってくれるなら」ということでお願いして。
ものすごくいいお話をしていただいてますよ。
そうですね。一応、お礼の電話もしましたけど。
本当にオープンな方で、全部しゃべってくださる。そこまでしゃべっていただくならと、他の方の2倍のページにさせていただいて。
見開き2ページが基本ですが、長文の原稿を書いてくださったジム・スタークさんと、井上さん、ジャームッシュさん、(林)海象さんが3ページで、小泉さんが4ページ。まだまだ、「こういう人たちに聞いておけば」というのがありますけど、締切のこともあって。申し訳なかったな……。
そうしたら倍くらいになっちゃいますからね(笑)。
表紙撮影のときのエピソードを1つ付け加えていいですか? このとき、アラーキーさんは永瀬さんに、「ここは密会なんだ。東欧からパツキンの女がやってきて」という風に、色々と設定していたんです。それで、「もうこれで情事が終わったので、髪の毛をハラッとしようね」と言って、ハラッとさせたときの顔が、表紙の写真なんです。だから優しい顔になってるんじゃないかと思います(笑)。
荒木さんとの撮影は、まるで映画みたいです。荒木さん、本物の天才ですからね。