主人公は世をすねた天才ハッカー。世界的な巨大企業を敵視する謎の男と出会ったことから、大規模なサイバー・テロに加担することになっていく。２０１５年、全米でスタートして以来、ＩＴ業界の暗部から現代社会の問題やタブーまでを鋭く描いた内容で話題沸騰のサイバー・サスペンスだ。

舞台はニューヨーク。巨大企業〝Ｅ（悪魔）コープ〟が顧客のサイバーセキュリティ会社でエンジニアとして働くエリオットは、人付き合いが苦手だが天才的ハッカー。秘かに、人のＳＮＳをハッキングしては、悪事を暴露して懲らしめている。ある日、Eコープのサーバーがハッキングされ、被害を最小限に食い止めたエリオットに〝ミスター・ロボット〟と名乗る謎の中年男が接触。凄腕ハッカー集団を率いるという彼は、「世界の富を牛耳るEコープのデータを破壊し、金融界を混乱させて世界に革命を起こそう」と誘ってくる。

ドラマは、ミスター・ロボットとは何者？ と怪しく思いながらも、彼と行動を共にしていくエリオットを追う一方で、彼をめぐる人々のエピソードも描く。全篇に伏線が張られ、終盤、あっと驚くような展開が待っている。

中東系のクリエーターが〝格差〟〝分断〟をテーマに落とし込んだドラマは現代の空気を見事に掬いとり、スリリングだ。中でも、主人公エリオット役で第68 回エミー賞主演男優賞に輝いたラミ・マレックはそんな本作の魅力を体現。とくに、その個性的な顔立ちが孤独で心を病んだ天才ハッカーというキャラクターにハマった。また、〝ミスター・ロボット〟役のクリスチャン・スレーターも、第73回ゴールデン・グローブ賞の助演男優賞を受賞。正義を振りかざしながらもどこか信用ならない男を怪演。若かりし頃のクリスチャンに魅了されたファンならば、中年の程よく枯れた魅力で新たな当たり役を得た彼に喝采したくなるだろう。