戦火たけなわな昭和19年。理髪師の清水豊松(中居正広)は、高知の海沿いの町で小さな店を開業していた。家族は、妻の房江(仲間由紀恵)と息子の健一。同業者の房江とは、駆け落ち同然で一緒になった仲だった。その町に二人でたどりつき、苦労を重ねて店を開いたのだ。そんな豊松にも召集令状が届いた。戦局は激しさを増して、豊松は本土防衛の中部隊に配属される。軍隊での日々の過酷さは想像を絶するものだった。矢野中将(石坂浩二)の指揮のもと、豊松や滝田(荒川良々)のような二等兵は、上官からボロ雑巾のように扱われた。ある日、撃墜されたB29の米兵がパラシュートで領地内に降下してきた。矢野中将は「処刑せよ」と命じ、その任務は豊松と滝田に回ってくる。上官からの命令は、陛下の命令に等しい。やむなく豊松は、すでに虫の息の米兵へと銃刀を向けた……。終戦を迎えて、豊松は高知へと帰った。房江や健一と再会し、ふたたび理髪師として腕を振るおうと決意する豊松。房江の胎内には新たな生命も芽生えていた。ささやかな幸福と平和を噛み締める豊松の身に青天の霹靂が起こる。戦犯容疑で占領軍から逮捕されたのだ。軍事裁判を受けた豊松は、絞首刑という重い判決が下る。わけもわからないまま、巣鴨プリズンに収容される豊松。そこで彼が出逢ったのは、いまも続く戦火のなごりの犠牲となる人々だった。同室になった大西三郎(草なぎ剛)は、翌日に処刑される。次に同室となった西沢卓次(笑福亭鶴瓶)は、減刑に向けてアメリカ大統領に嘆願書を綴っていた。高知から3日がかりで訪れた房江と健一、産まれたばかりの直子と面会した豊松は泣き崩れた。そして、房子は減刑の嘆願のため、知人の伝手を頼って雪の中を奔走する。しかし、その努力も報われることはなかった。豊松に処刑の日がやってきたのだ。最後に残した彼の遺言は、「生まれ変わったら、私は貝になりたい」だった。