ネオンきらめく繁華街の路地裏。夜も更けた頃に「めしや」と書かれた提灯に明かりが灯ることから、人は“深夜食堂”と呼ぶ。メニューは酒と豚汁定食だけだが、頼めば大抵の物なら作ってくれる。そんなマスター(小林薫)の作る味と居心地の良さを求めて、その小さな食堂は夜な夜なにぎわっていた。ある日、常連客たちが何故か次々と喪服姿で現れる。不幸が重なることはあるもので故人の話を語り合う中、また一人、喪服姿で店に入ってくる範子。だが、範子は喪服を着るのがストレス発散という変わった趣味を持っていた。ところが実際に葬式をすることになり、そこで知り合った男に惹かれて……。父親を亡くした近所のそば屋の息子・清太は母・聖子との関係に頭を悩ませつつ、年上の恋人・さおりとの結婚を考えている……。金に困った息子に呼ばれ田舎からわざわざ出てきたという夕起子。息子の知人という人物に大金を渡してしまい、騙されたのではと周囲は心配するが本人はどこか気にしていない様子……。春夏秋冬、ちょっとワケありな客が現れては、マスターの作る懐かしい味に心の重荷を下ろし、胃袋を満たしては新しい明日への一歩を踏み出してゆく……。