東京の出版社に勤務する25歳の久里子は、カメラマンの充生との婚約を両親に報告するため、瀬戸内海に浮かぶ瀬ノ島に帰省する。今は定年退職し小学校を改築した民宿の管理をしている元校長の父を前に、彼女はなかなか話を切り出すことが出来ない。そんなある日、久里子は倉庫で小さな鈴を見つける。それは、島の伝説“鶴姫”が胸に抱いて身投げした悲恋の鈴で、彼女が小学生時代にシーサイド留学で島に来ていた初恋の相手・隆司と再会を誓って分け合った思い出の品だった。やがて、鈴の音に導かれるかのように、久里子は幼なじみの健太と一緒に隆司の消息を訪ねる小さな旅に出る。ところが、やっと探し当てた隆司は高校生の時に交通事故で亡くなっていたのだ。そのことを彼の妹から聞かされた久里子は、彼女の鞄に鈴がぶら下がっていることに気づく。兄が大切にしていた形見の鈴。そう、隆司は誓いを忘れないでいてくれたのだ。帰りの船、久里子は過去の自分と訣別すべく、そっと鈴を海に投げ入れた。それから数日後、父と魚釣りに出掛けた久里子は、そこで結婚することを告げる。