無計画で夢見がちな売れない漫画家カラスヤサトシこと29歳の片桐聰(井上芳雄)は、ある朝思い立って、突然大阪から上京する。部屋探しをしても、貧乏ゆえに訳あり物件ばかりを勧められる中、やっと見つけたのはアパート“松風荘”。そこでは、生きた毛ガニをプレゼントしてくるロシア人や、片桐に恋心を抱く青年など個性的な住人たちが賑やかに暮らしていた。上京して一週間、ようやく“おのぼり生活”も軌道に乗りかけた頃、突然唯一の連載雑誌が休刊。片桐は“貧乏な漫画家”から、ただの“漫画家を夢見る無職の男”となってしまう。そこへ、先に上京していた高校の同級生、野島由美子(肘井美佳)から連絡が。片桐が“先輩”と呼ぶ由美子は大阪の専門学校を卒業後、カメラマンになる夢を追いかけて上京していたが、未だにアシスタント。30歳目前の2人は、ともに才能と年齢の間で悩んでいた。それでも互いに励ましあい、片桐は漫画を、由美子は写真をそれぞれ出版社に持ち込む。だが、そう都合よく物事が運ぶわけもなく、“面白くない”、“古い”といつものように一蹴されてしまうのだった。さらに追い討ちをかけるように、アパートのオーナー田渕(哀川翔)からは、松風荘を取り壊すための立ち退き勧告を受ける。踏んだり蹴ったりで弱気になった片桐は、実家に戻ることを考え始める。漫画家の夢を諦めかけた夏の終わり…。そのとき、母の景子から電話が入る。父の章雄(チチ松村)にガンが見つかったというのだ。慌てて大阪に戻る片桐だったが、病床の父を安心させられるような報告を何一つできず、自分の不甲斐なさを思い知る。職なし、コネなし、貯金ゼロの漫画家志望片桐聰。彼の夢の行方は一体どうなるのか……?