カメラマンとして自立したものの、理想と現実のギャップに悩んでいた誠人のもとに、3年前に別れた恋人・里中静流からエアメールが届く。ところが、友人によると彼女は1年前にニューヨークで殺されたという。では何故、今ごろ静流から手紙が? 静流のエキセントリックな魅力に惹かれ、交際を始めたのは大学時代。彼女はカメラマンを目指す誠人にとって素晴らしい被写体でもあったが、やがて静流自身も写真を撮るようになり、いつしかその才能を開花させていった。そんな彼女のセンスに嫉妬し、別れを決意した誠人。だが、静流は今でも忘れられない存在だった。彼女の生死を確かめるべくニューヨークへ旅立った誠人は、静流が送ってきた1枚の写真を手がかりに、牧師のカシアス、静流の友人でダンサーを目指すアヤの力を借りて、その行方を追う。静流が歩いた街を歩き、静流が見た風景をカメラに収めるうち、静流と自分がオーヴァーラップしてゆく……。そんな中、思いがけない真実が浮かび上がった。やはり静流は殺されていて、その犯人はアヤだったのだ。アヤは成功を掴みかけようとしていた静流を妬んで殺害し、更に静流の日本の知り合いから金を騙し取ろうと誠人らに手紙を送りつけていたのだ。モルグで静流の遺体を確認した誠人に、彼の写真があるギャラリーで認められたとの朗報が届く。そして今、誠人は里中静流と名乗り、プロ・カメラマンとして活躍している。