高度経済成長が始まった1958年。少年ユウチャ(有山実俊)は、大きな川の上流にある山間の集落で、林業に従事する父、病で臥せる母、老いた祖母と暮らしていた。まだ自然豊かな土地ながら、森林伐採の影響を受け、ユウチャの家族は年々深刻化していく台風による洪水被害に脅かされていた。そんな夏休みの終わり。集落に紙芝居屋がやってくる。集まった子どもたちに披露された演目は、この土地に古くから伝わる里の娘・お葉(華村あすか)と山の民である木地屋の青年・朔(葵揚)の悲恋の物語だった。叶わぬ想いに打ちひしがれたお葉は、山奥の淵に入水。それからというもの、彼女の涙が溢れ返るように数十年に一度、恐ろしい洪水が起きるというのだ。紙芝居との不思議なシンクロを体験したユウチャは、家族を脅かす洪水を防ぎ、同時に哀しみに囚われたお葉の魂を鎮めたいと願い、古くからの言い伝えに従って川を遡り、山奥の淵へと向かうが……。