他人とうまく関わり合えない青年・雄二。ある夜、彼が唯一心を許せる同僚の守が、勤務先の工場長夫婦を殺害した。刑務所へ面会に訪れる雄二に対して、彼に譲ったペットのアカクラゲのことばかり、守は気にかける。苛立つ雄二は水槽をひっくり返してしまうが、クラゲはそのまま床下に流れ去っていく。それからしばらく後、雄二にだけ分かる“行け”のサインを残して、獄中で守が自殺した。彼の死後、守の父親・真一郎が営む小さなリサイクル工場に身を寄せることになった雄二は、仕事の手伝いのかたわら、東京のどこかで生きているだろうクラゲのために、川に餌を撒きつづけた。しかし、真一郎には雄二の行動が理解しがたい。分かり合えない二人は喧嘩し、自棄になって工場を飛び出した雄二は、深夜のゲームセンターで知り合った高校生たちと、妹の夫・高木の会社に押し入ってしまう。だが、警報装置の通報によって高校生たちは警察に捕まり、ひとり逃げ延びた雄二は、再び真一郎の世話になる。その頃、テレビでは川に発生したクラゲの大群のニュースを報じていた。いつの間にか、クラゲは東京の水に順応していた。それを目の当たりにした真一郎は、クラゲを追って川の中に入ってゆく。数日後、雄二が去った工場で、真一郎が黙々と作業を続けている。街には、暇を持て余した高校生たちが、どこかに向かって力強く歩き出していた。