カルト教団真理の箱舟が無差別殺人を起こし、その5人の実行犯が教団の手で殺害され、教祖も自殺した事件から3年後の夏。故人の命日に集まった4人の加害者遺族は、遺灰を撒いたとされる山間の湖に手を合わせた。ところが、林道に停めておいた車が盗まれ、彼らはその場に居合わせた元信者である坂田の案内で、実行犯たちが潜伏していたロッジで一夜を明かすことになる。そこで、否応なく過去と向き合う5人。予備校の教師をしているきよかは、理想の教育を追求しようとして向こう側へ行ってしまった夫・環とのことを。気ままな学生生活を送っている勝は、兄が出家前日に訪ねて来た時のことを。建設会社に勤める実は、妻が高校時代の後輩・宮村と教団へ行くと告白された日のことを。花屋で働く敦は、夜と昼の間のサイレント・ブルーという時間について語った姉・夕子とのことを。そして、事件直前に脱走した坂田は、4人の遺族に故人たちの最後の様子を、教祖のことを尋ねる敦に彼のことを語って聞かせた。一夜明けて、無事、東京へ戻った5人は、1年後の再会を約束して別れる。だが帰りの電車の中で、坂田は敦に気になる言葉を残していた。「あなた、ほんとは誰なんですか?」 実は、夕子の弟が自殺していたことを、坂田は夕子から聞いて知っていたのだ。数日後、再び湖に敦の姿があった。彼は、湖面に向かって小さく呟く。「父さん」と。