明治15年(1882年)、北の原野に鍬を打ち込み、やがては百万坪、二百万坪の農地を開墾すると宣言し「晩成社」を結成した依田勉三(北村一輝)は、夢を共にする30余名の開拓団を率いて、北海道十勝原野の大地に錦の旗を揚げるべく、故郷静岡県伊豆国小沢村(現・松崎町)を出発した。荷馬車、大八車に荷を積み、未知の荒野への第一歩を踏み出した一行の旅は、信じた夢のはじまりであり、同時に果てしない苦悩のはじまりでもあった。凍てつく空気、密林と草原が広がる大地、困難を極める開墾作業、思うにままならぬ農作物の栽培。先住民であるアイヌの人々との確執、わずかばかりの作物を容赦なく喰い荒らすバッタの大群、そして大切な仲間たちとの別れ…。いかなる困難にも負けず、自分の信じた道を邁進し続けた依田勉三。いつも百年後の世界を夢見続けた勉三の魂は、没後も消えることなく北海道の人々の心に受け継がれ、“新しい風”となって、今日の十勝野の大地に吹き寄せるのである。