昭和63年、暮れ。夜の街・銀座のキャバレーでピアノを弾いていたジャズピアニスト志望の博(池松壮亮)は、ふらりと現れた謎の男(森田剛)のリクエストで『ゴッドファーザー 愛のテーマ』を演奏する。しかしその曲をリクエストしていいのは銀座界隈を牛耳る熊野会長(松尾貴史)だけ、そして演奏を許されているのは会長お気に入りの敏腕ピアニスト・南(池松壮亮/二役)だけという不文律があった。博はジャズを演奏できる場所を求めてキャバレーを辞め高級クラブのハウスバンドを目指し、一方高級クラブをかけもちしている南は音楽に耳を傾けようとしない酔客たちの前で演奏する日々に嫌気がさしていた。ジャズマンになるという夢に向かって邁進する博と、夜の世界のしがらみに囚われ夢を見失った南、二人のピアニストの人生が交錯し、不可能な“一夜”を迎える……。