28歳、彼氏ナシの本郷トワ(菊池亜希子)は、東京で塗装会社の研究員をしている女性。幼い頃に父・ゆきお(眞島秀和)と死別した後、再婚を許す事が出来なかった母とは、10年前に故郷の花巻を出てから音信不通になっていた。会社では同僚にも上司にもなじめず、ひとり浮いた存在。父がまだ元気だった頃、よく読んでくれた宮澤賢治の童話『よだかの星』に出てくる、嫌われ者で醜いよだかに自分を重ね、父の幻影を見ながら空しさを感じて生きていた。ある日、トワは同郷の老人、町子さん(北上奈緒)と知り合う。町子さんは孫に手縫いの浴衣を届けるため、花巻まつりへ行くつもりでいたが、事情により不可能になったことから、代わりにトワが届ける事に。辛い想い出の場所である故郷に帰ることを決意するトワ。夏が終わり、黄金の稲穂輝く岩手県の花巻を訪れた彼女は、手がかりを辿って町子さんの知人を訪ねるが、町子さんの孫はもう何年も前に大人になっていた。町子さんは、一体どこへ行こうとしていたのか……?目的を失くし、途方に暮れたトワの足は、釜石線、イギリス海岸、賢治の井戸、と思い出の場所を歩くうちにいつしか実家へと向かっていた。そんなトワを暖かく迎えてくれたのは、いとこのいずみ(いせゆみこ)。いずみとの思い出話の中で、母の隠れた気遣いを知らされ、周囲の人々の変わらぬ愛情と自分の未熟さを思い知る。日が暮れて見物に出かけた祭りでは、人混みの中に亡き父と幼い自分が手をつないでいる姿を目にして、亡くなった後も父に守られていたことに気づくトワ。山車、太鼓、神輿が入り乱れる祭りのクライマックスは、忘れていた興奮と胸の高鳴りを思い出させてくれた。愛してくれるもの愛すべきものがある故郷の地で、トワの目に子供の頃のような生きる輝きが戻る。北の空に輝くよだかの星のように。