1994年、南フランスで発見されたショーヴェ洞窟。その奥には、それまで最古とされてきたラスコー洞窟の壁画より遡ること1万7千年、3万2千年前に描かれた洞窟壁画が広がっていた。以来、フランス政府は貴重な遺跡を守るため、認定された一部の研究者や学者を除き、一切非公開の姿勢を貫いてきた。2007年にはユネスコが認定する世界遺産“暫定リスト”に登録。現在、正式登録が待ち望まれている状態である。洞窟内の壁画は、260点の動物画を含む総数300点以上が発見されている。現在のヨーロッパでは絶滅した野生の牛、馬、サイ、ライオンなど13種類の動物が描かれ、従来知られていた氷河時代の洞窟壁画では稀有なフクロウやハイエナやヒョウなども。壁画に使われている技法はスタンプや吹き墨。この洞窟に、初めてドイツの巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク監督率いるスタッフが入り、3Dカメラによる撮影を敢行。3万2千年前の無名アーティストたちに思いを馳せ、その心のありようにまで迫り、最先端の映像技術を駆使して、現代と太古の文化の出会いをヴィヴィッドに浮かび上がらせる。さらに、ヘルツォークがこれまでに描いてきた様々なモチーフやテーマも見事に融合し、個性的な映画に仕上がった。