懐かしい雰囲気の漂う月舟町。月舟アパートメントに住んでいる雨降り先生(八嶋智人)は、いたって普通の人間だった。しかし、十字路の角にあるつむじ風食堂で、古本屋を営むデニーロの親方(田中要次)、イルクーツクに行きたがっている果物屋の青年(芹澤興人)、不思議な帽子屋の桜田(下條アトム)、売れない舞台女優の奈々津(月船さらら)など、毎夜集まる風変わりな常連客たちと接していくうちに、最初は違和感を覚えていたが、次第にこの町の人々と馴染んでいく。桜田は“二重空間移動装置”という万歩計を先生に売りつけ、デニ―ロの親方は『唐辛子千夜一夜奇譚』という本を売ってくれる。また先生は、果物屋の青年と宇宙の果てについて考えたり、タブラさんの息子(スネオヘアー)とエスプレッソマシーンを懐かしんだりする。奈々津は先生に、芝居を書いてほしいと頼んでくる。こうしたちょっとした出来事を積み重ねるうち、先生は過去の自分、そして未来の自分と対峙することになる。