京劇の名門に生まれた梅蘭芳は、早くに両親を亡くし、伯父に育てられる。だが、伯父は些細なことで罪に問われて処刑されてしまう。蘭芳に励ましの手紙を残して。10年後、清朝崩壊後の中華民国。女形として活躍していた梅蘭芳(ユイ・シャオチェン)は、伝統に縛られず、京劇に現実感を持たせるべきだとする政府高官の邱如白(スン・ホンレイ)に共感。2人は義兄弟の契りを交わす。だが、伝統を重んじる師匠の十三燕(ワン・シュエチー)はそれを快く思わず、2人は劇場で対決することに。序盤、苦戦した蘭芳だが、観客の心を掴んで勝利する。数年後、スターとして円熟期を迎えた蘭芳(レオン・ライ)は、邱とともにアメリカ公演を計画。だがその頃、彼は男形女優の孟小冬(チャン・ツィイー)と愛を深めていた。次第に京劇界の付き合いを拒むようになっていく蘭芳。2人の関係が蘭芳の妨げになると感じた邱は、蘭芳の妻、福芝芳(チェン・ホン)を小冬のもとへ差し向ける。“彼は観客のもの”と涙ながらに訴える芝芳に、小冬は身を引くことを決意。彼のもとを去ってゆく。やがて開催されたアメリカ公演は大成功。だが、小冬の件を知った蘭芳と邱の間には溝が生まれる。1937年、日本占領下の中国。邱と別れて上海に住んでいた蘭芳を、日本軍の田中少佐(安藤政信)が訪れる。彼を占領政策に利用する計画だったが、蘭芳はそれを拒否。田中は邱に蘭芳の説得を依頼する。追い詰められた蘭芳は命の危険を冒して自らにチフスを注射。それは、利用されまいとする彼のプライドの表れだったが、その代償として病床に伏してしまう。その枕元で、心の支えにしてきた伯父の手紙を邱に見せる欄芳。その愛情溢れる手紙に邱は胸を打たれる。1945年、日本が降伏すると蘭芳は舞台に復帰。大勢の人に迎えられ、楽屋へと向かう蘭芳。満員の客席には、幕が開くのを万感の思いで見守る邱の姿があった……。