或る小藩。ここでは、町奉行が不明瞭な辞職を繰り返していた。そんな矢先、江戸から望月小平太なる新任がやってくる。ところが、その男には振る舞いの不埒さから_どら平太_という渾名がついていた。実際、着任する筈の期日を10日も過ぎても、彼は奉行所に出仕しない始末なのだ。しかし、それはどら平太本人が友人で大目付の仙波義十郎に頼んで、わざと流させた悪評であった。実は、彼は密輸、売春、賭博、殺傷などが横行する「壕外」と呼ばれる治外法権と化した地域の浄化にやってきたのだ。早速、遊び人になりすまし壕外に潜入した彼は、壕外の利権を分け合っている3人の親分の存在を知る。密輸業を仕切る大河岸の灘八、売春業を仕切る巴の太十、賭博を仕切る継町の才兵衛。そんな彼らに、腕っぷしの強さと豪快な遊び方を見せつけ圧倒するどら平太。遂に、彼は誰もがなし得なかった3人の親分を観念させることに成功する。だが、彼が奉行として彼らに下した罪状は、死罪ではなく永代当地追放であった。実は、どら平太の本当の目的は、彼らと結託して私腹を肥やしていた城代家老・今村掃部を初めとする藩の重職たちの不正を正すことにあったのだ。灘八たちに藩と結託していた証拠を無理矢理作り出すことを命じ、それをもって重職たちを退陣に追い込むどら平太。しかし、藩の重職たちと3人の親分の間で私腹を肥やしているもうひとりの人物がいた。それは、義十郎であった。だが、そのことを知ったどら平太の前で義十郎は自害してしまう。こうして、どら平太は一度も奉行所に姿を現さないまま役目を全うした。しかし、そんな彼にも苦手なものがあった。それは、彼とは7年来の馴染みで、先般、江戸から彼を追いかけてやってきた芸者のこせいである。江戸に連れ帰ろうとする気の強い彼女に捕まってなるものかと、どら平太は次なる赴任地へ駄馬を走らせる……。