高級ホテルの理髪店に勤める四〇歳の江津佑次は、妻と別れ、若い恋人・可葉子と一緒に暮らしていた。ある日前妻から電話があった。赤ん坊の時から一度も顔を合わせていない娘のみのりが、高校の入学祝いに江津に会いたいという。可葉子は二人の生活に江津の過去が立ち入ってくることに寂しさを感じるが、江津の思いをくみとり反対はしない。江津の方は、ホテルのベルボーイで野球仲間の高沢から最近の女子高生の乱れた生活の話を聞いたりして不安になる一方、休日を利用して、みのりと待ち合わせをするレストランの下見に出かけ、若い娘たちにならってクレープを注文してみる。『ここのクレープはおいしいんだよ』そんな台詞を気恥ずかしいと思いつつ、娘に言ってみたいと思う。そして遂にその日が来た。小雨の降る中、レストランにやって来たみのりを迎える江津。最初はぎこちない再会ながらも、江津が勧めたクレープをみのりがおいしく食べた頃から二人は打ち解け合っていく。だが、みのりの誕生日を江津はもう覚えていないことが分かって絶望的になる。レストランを出て散歩をする二人。河川敷の少年野球を何げなく見ることになった江津は、一方的に負けているチームを懸命に声援し出す。一緒に応援しだすみのり。……一日が終わり、帰りの駅のホームで、江津はみのりに、可葉子からと神社のお守りを渡す。小さく手を振り、ほほえむみのりを見送る江津。夜の街の雑踏の中で、しばらく一人群衆を眺めていた江津は、電話ボックスに入り、可葉子を呼び出すのだった。