東北の百姓達にとって毎年の草刈りは楽しい年中行事の一つだった。そで子婆さんは隊長格で若い男女を指揮して草を刈り、向うの麓にはため子婆さんの一隊が小屋掛けしている。毎年こうして幾つかの縁組が出来上っているのだが、今年二人の婆さんがくっつけようと思っているのは、モヨ子と時造である。先ず首尾は上々、占いは吉と出た。ところが時造が芸妓チョン丸と親密であったり、話の最中に突然モヨ子を押し倒して乱暴を働いたりするので、どうやら難航である。このためモヨ子びいきのそで子婆さんと時造びいきのため子婆さんまで喧嘩をしてしまい、駐在所の巡査中村旦那の裁決を仰ぐ。中村巡査は喧嘩しているのは婆さん達ばかりで、若い二人はとっくにケロッとして野性的なラブ・シーンを演じているのを知り、秋の手入れが終り次第モヨ子と時造の祝言を催すことを、二人の婆さんに申し渡した。