小林勇は高校に入学すると剣道部に入った。理由は、対峙した時の緊張感が好きだったからである。十五歳の勇にはOLの姉、保険外交員の母とお金にまったく無頓着の絵描きの父がいた。苦しい家計を助けるために牛乳配達などをする勇は父の生き方に批判的であるが、母の父を許す姿に、なんとなく納得している。そんな勇も、弟という気安さから見せる姉の下着姿に戸惑いを感じるのだった。ある日、同じクラスの秋間の発案で勇は痴漢退治に行った。盛装して見違える程美しくなった級友の小夜子を囮にして、現われた痴漢をメッタ打ちにした。翌朝、勇は幼稚園で同級だった片桐清美に会った。彼女とは六年ぶりの再会だが、見紛うほど成長していた。数日後、清美とデートをした勇は、彼女からラプホテルに誘われ、避妊具まで用意してきた清美に、勇はほうほうの態で逃げ帰った。小夜子が剣道部に入った。部室で、道着の着け方を教えているうち、勇は思わず小夜子の唇を奪った。宿敵、明倫高校との試合があった時、勇は一年生ながら先鋒に起用され、調子良く五人勝ち抜き、強敵、やはり同じ一年生の石渡と対峙した。その日の夕方、小夜子は勇に言った。「小林君はずるい人だと思っていた。だから私もずるい人間になろうと思った。しかし、試合中の小林君の姿を見て、そんな人じゃないと判ったから、剣道部を辞めようと思うの」。言っていることがよく理解出来なかったが、小夜子の繊細な感情が勇に伝わり二人はいっぺんに打ちとけた。本心をぶつけ合う二人はしあわせそうたった……。