卓球がネクラでマイナーなスポーツと言われていたのも今は昔。いつからか人気の花形スポーツとして定着している。本作はその卓球に打ち込む若者を描いているが、ありきたりの青春スポーツ映画とは異なる。
幼馴染みのペコ(窪塚洋介)とスマイル(ARATA)は子供の頃から卓球に明け暮れ、今は同じ高校の卓球部員だ。破天荒で陽気なペコに対し、クールなスマイル。このスマイルというニックネームも笑わないことから付けられている。180度性格が違う二人だが、仲は良い。元々、スマイルに卓球を教えたのはペコだが、今となっては実力は追い抜かれているようだ。主人公はペコかと思っていたら、実はスマイルかとも思えて来る。
この二人を様々な人間が取り囲む。スマイルの才能を見抜き、徹底的に彼を鍛え、彼しか眼中にない卓球部顧問(竹中直人)。若い頃はバタフライジョーの異名を持ち、卓球で頂点を目指すも、目前で挫折した過去を持つ。自分が果たせなかった夢をスマイルに託しているようでもある。ペコらが子供の頃から通う卓球場のオババ(夏木マリ)。ジョーとは旧知の間柄だ。一度はラケットを捨てたペコが一から教えを乞うほどだから、彼女もかつては鳴らした選手だったに違いない。彼女の厳しい特訓のおかげでペコは再起する。
彼らの前に、中国人留学生のチャイナや強豪校のドラゴンらが立ちはだかる。いずれも強烈な個性を発揮しているが、強敵ドラゴンを演じる若き日の中村獅童が圧倒的な存在感を放っている。スキンヘッドに全身カミソリのような体型、卓球に対するストイックさは修行僧のようでもある。
破天荒なペコ、クールなスマイルとライバル達との対決に加え、この二人が卓球を通してどう成長するかも描かれる。せっかくなら二人の恋愛も入れて欲しかった。
ラストシーンで数年後の彼らの姿を見ることで、彼らの成長が窺える。やはり主人公はペコだった。