天国と地獄

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天国と地獄

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レビューの数

133

平均評点

85.5(752人)

観たひと

1187

観たいひと

140

  • VODで観る

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル サスペンス・ミステリー
製作国 日本
製作年 1963
公開年月日 1963/3/1
上映時間 143分
製作会社 東宝=黒澤プロダクション
配給 東宝
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 4chステレオ

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督黒澤明 
脚色小国英雄 
菊島隆三 
久板栄二郎 
黒澤明 
原作エド・マクベイン 
製作田中友幸 
菊島隆三 
撮影中井朝一 
斎藤孝雄 
美術村木与四郎 
小道具野島秋雄 
音楽佐藤勝 
録音矢野口文雄 
整音下永尚 
音響効果三縄一郎 
照明森弘充 
衣裳鈴木身幸 
製作担当者根津博 
チーフ助監督森谷司郎 
記録野上照代 
スチル副田正男 
特殊機械大隅銀造 
撮影助手原一民 
編集助手兼子玲子 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演三船敏郎 権藤金吾
香川京子 権藤伶子
江木俊夫 権藤純
佐田豊 青木
島津雅彦 青木進一
仲代達矢 戸倉警部
石山健二郎 田口部長刑事
木村功 荒井刑事
加藤武 中尾刑事
三橋達也 河西
伊藤雄之助 馬場専務
中村伸郎 石丸重役
田崎潤 神谷重役
志村喬 捜査本部長
藤田進 捜査一課長
土屋嘉男 村田刑事
三井弘次 新聞記者A
千秋実 新聞記者B
北村和夫 新聞記者C
東野英治郎 年配の工員
藤原釜足 病院の火夫
沢村いき雄 横浜駅の乗務員
山崎努 竹内銀次郎
山茶花究 債権者A
西村晃 債権者B
清水将夫 刑務所長
清水耕次 魚市場の事務員
熊倉一雄 魚市場の事務員(声)
清水元 内科医長
名古屋章 山本刑事
浜村純 債権者
織田政雄 税務署執行吏
西村晃 債権者
田島義文 看守長
宇南山宏 島田刑事
牧野義介 高橋刑事
近藤準 刑事
鈴木智 小池刑事
大村千吉 病院の外来患者
加藤和夫 鑑識課員
菅井きん 麻薬患者
富田恵子 麻薬患者・殺される女
小野田功 麻薬患者
田口精一 中村刑事
松下猛夫 税務署執行吏
山本清 上野刑事
伊藤実 刑事
鈴木治夫 刑事
大滝秀治 新聞記者

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

エド・マクベイン原作“キングの身代金”を「椿三十郎」の小国英雄、菊島隆三、久板栄二郎、黒澤明が共同で脚色、黒澤明が監督した刑事もの。撮影は「娘と私」の中井朝一と「ニッポン無責任時代」の斎藤孝雄。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

ナショナル・シューズの権藤専務は、大変な事件に巻込まれてしまった。明日まで五千万円を大阪に送らないと、次期総会で立場が危くなるというのに、息子の純と間違えて運転手の息子進一を連れていってしまった誘拐犯人から、三千万円をよこさないと進一を殺すという電話があったからだ。苦境に立った権藤は結局金を出すことになった。権藤邸に張りこんだ戸倉警部達は権藤の立場を知って犯人に憎しみを持った。金を渡す場所。それは、明日の第二こだまに乗れということだった。犯人は戸倉警部達を嘲笑するかのごとく、巧みに金を奪って逃げた。進一は無事にもどった。権藤は会社を追われ、債権者が殺到した。青木は進一の書いた絵から、監禁された場所を江の島附近と知って、進一を車に乗せて江の島へ毎日でかけていった。田口部長と荒井刑事は、犯人が乗り捨てた盗難車から、やはり江の島の魚市場附近という鑑識の報告から江の島にとんだ。そこで青木と合流した二人は、進一の言葉から、ついにその場所を探り出した。その家には男と女が死んでいた。麻薬によるショック死だ。一方、戸倉警部は、ある病院の焼却煙突から牡丹色の煙があがるのをみて現場に急行した。金を入れた鞄には、水に沈めた場合と、燃やした場合の特殊装置がなされていたのだ。燃やすと牡丹色の煙が出る。その鞄を燃やした男はインターンの竹内銀次郎とわかった。また共犯者男女ともかつてこの病院で診察をうけており、そのカルテは竹内が書いていた。今竹内をあげても、共犯者殺人の証拠はむずかしい。戸倉警部は、二人の男女が持っていた二百五十万の札が、藤沢方面に現われたと新聞に発表する一方、竹内には、二人が死んでいた部屋の便箋の一番上の一枚に、ボールペンで書きなぐった後を復元した、「ヤクをくれヤクをくれなければ……」という手紙を巧妙に渡して、腰越の家に罠を張って待った。そして、竹内には十人からの刑事が尾行についた。竹内は横浜で麻薬を買った。肺水腫に犯された二人が麻薬純度九〇%のヘロインをうって死なないはずがない。竹内はそのヘロインを今度は、伊勢崎町の麻薬中毒者にあたえてためそうというのである。果して一グラム包〇・三%を常用している中毒者は忽ちにしてショック死した。彼は薬の効果を確かめてから、二人の男女中毒者をおいておいた腰越の別荘に走った。そこには、すでに戸倉警部の一行が、ずっとアミを張って待っているのだ。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2017年11月上旬特別号

野上照代に訊く黒澤映画 「天国と地獄」後篇:インタビュー 野上照代

2007年11月上旬特別号

見逃してはいけない@スカパー!:『露木茂の「ニュース映画で見る昭和」』「天国と地獄」「縛り首の木」

1983年11月上旬号

特別企画 [黒澤明の全貌]によせて 第1回 私の黒澤映画:「天国と地獄」

1963年4月上旬春の特別号

日本映画批評:天国と地獄

日本映画紹介:天国と地獄

1963年3月下旬号

「天国と地獄」・黒沢明の世界:

1963年3月上旬増大号

2大シナリオ特集:天国と地獄 黒沢明監督(東宝映画)

1962年12月上旬号

新作グラビア:天国と地獄

1962年11月上旬号

秋の日本映画の大作探訪:「天国と地獄」と黒沢明

1962年9月上旬号

旬報万年筆:黒沢映画「天国と地獄」スタート

2021/01/11

2021/01/15

80点

映画館 


身代金目的の誘拐事件を扱ったサスペンスだが、さすが黒澤。特に前半の緊迫感はすさまじく、場面ごとに変わる立ち位置、画面配置の見事さに見入られつつ犯人とのやりとりに手に汗。
事件に絡めて高度成長期の陰陽を浮き彫りにする後半の展開も見事。

2021/01/11

2021/01/11

93点

映画館/東京都/新文芸坐 


引き込まれた!

誘拐犯人に迫っていく刑事たち。それを突き動かした被害者の潔さ。白黒映画に唯一のカラー場面!納得!

2020/11/25

2020/12/19

90点

テレビ/有料放送/WOWOW 


序破急のメリハリを効かせた第1級のサスペンス映画

ネタバレ

緻密なプロットである。よく考えられて、隙がない。何回観てもやっぱり面白い。何回観たか覚えていない。

権藤邸応接間での重役たちの腹の探り合い。話し合いは延々と続いて、これが主筋であると普通は思う。話し合いが決裂して重役たちが帰っていく玄関先で、すれ違いに西部劇ごっこで走ってくる子供たち。このさり気ない点描が、その後の展開に全て意味を持って繋がっていく。子供たちが遊びの途中で、保安官と追われる者との役割を交代しているのを観客に見せる。主筋と思われた会社乗っ取りのおとなの行動の方は権藤(三船敏郎)と秘書(三橋達也)との間で大阪出張の話が着々と進んでいく。その合間に、子どもたちの点描が挿入される。追っかけるはずの保安官が全然追いかけてこないのを追われ役の子どもが「あんな保安官居ないよ」とぼやいている。何か変だ。既に主筋と見えたもの以外の何かが動き出している気配が漂う。一本の電話が掛かってくる。「あんたの子供を誘拐した」と。ここで本当の主筋が明らかになる。そして、子供たちの遊びで役割を変えていたことが物語の展開に大きな意味をもってくる。原作(エド・マクべイン)のユニークなアイデアはこの一点にある。

場面を権藤邸だけに絞った展開でほぼ50分、観客を密室に閉じこめておいて、特急こだまが疾走するダイナミックな場面で一気呵成に空間を開放する。静から動への急展開でいっそう爽快感が増幅して観客の気持ちを鷲掴みにしてしまう。話の内容(ストーリー)が面白いだけではない。話を進めるテクニック(話術)が見事なのである。

情報収集、捜査会議、記者会見と犯人の絞り込みが論理的に時にはユーモアを交えながら描かれていく。そして、最後の締めとして、大村千吉が手紙を持って登場し「竹内さんかい?」と白衣のインターン(山崎努)に手紙を渡す。このシーンをきっかけにして話は転調して、犯人が動き出し警察も動き出す。サスペンス映画として揺るぎない犯人追い込みのアクションシーンがここから始まる。いやもう、序破急のメリハリを効かせた語り口の巧さに酔わされる。何回も観る気になる所以である。

2020/12/08

97点

VOD/U-NEXT 


幸せな者を不幸にする持たざる者の喜び

ネタバレ

黒澤明監督は人情というものをとても大切にする人だと改めて感じた。
ナシュナルシューズの重役を務める権藤の身に振りかかる災難。それがこの映画のタイトルである『天国と地獄』を良く表している。
例えコストがかかっても丈夫でしっかりした靴を作りたい、そう考える権藤とは対称的に他の重役たちは利益を見込める低コストで、しかも頻繁に買い換えられるような靴を開発しようとしている。彼らは権藤と同じ考えを持つ現社長を追い出すために、持ち株を集め会社を乗っ取る計画を権藤に持ちかけるが、彼はそれを拒否し彼らを追い返す。
権藤には秘かに温めていた計画があり、会社の株を買い占めるために自らの全資産をつぎ込む大勝負を打っていた。
間もなくその計画が実現する。権藤にとってはまさに天国のような日々が実現するかに思われた。
しかしそこに一通の電話がかかってくる。それは若い男の声で、権藤の息子を誘拐したというものだった。
犯人が要求する身代金は3000万円。それは資産を投じた今の権藤にとっては途方もない金額だった。
しかし息子の命には代えられない。一気にここで権藤は地獄に突き落とされたかに思われた。
しかし電話を切った後に息子の純は姿を現す。実は犯人は権藤の運転手の青木の息子である進一を間違って誘拐していた。
間違いに気づいた犯人は、それでも権藤にあなたは身代金を払うはずだと強気の姿勢を見せる。
地獄から抜け出せたと思われた権藤だが、彼にとっての苦難はまだ続く。進一を助けたい想いはあるが、彼はすぐにでも大阪に5000万円を送金しなければ、会社を乗っ取ることは愚か、全財産を失うことになっていた。
運転手の青木、妻の玲子は何とかして進一を助けてはくれないかと権藤に懇願する。
しかし進一を助ければ自分は全財産を失う。叩き上げである権藤は恐らくこれまでに血のにじむ努力をし、ここまで這い上がってきた。
また以前のような地獄のような暮らしは送りたくないし、また良家の娘であった玲子にそんな苦労はさせられない。
秘かに呼び寄せた警察の戸倉たちが見守る中、やがて権藤は決断を迫られる。
身代金を払うのか払わないのか、権藤の心の揺れ動く振り幅がとても大きく観る者も常に緊迫した空気感を味わうことになる。
決断をすぐに出せない権藤に見切りをつけて、彼の片腕であった川西はあっさり他の重役側に寝返ってしまう。
戸倉は形だけでもいいから身代金を払うふりをして、何とか犯人の注意を引き付けてほしいと権藤に頼むが、権藤は思いきって銀行に電話をかけ3000万円の手配をする。
その姿に心を打たれたのは青木や玲子だけでなく、戸倉たち刑事も同じだった。
このあたりの人間模様の描き方が実に上手い。
そこから身代金の受け渡しについてのやり取りが始まるが、どうやって犯人は安全に身代金を受け取るつもりなのか、予測の出来ない展開にハラハラさせられる。
犯人の要求に従って権藤が走る特急の窓から高架下に向かって鞄を投げるシーンの緊迫感は凄かった。
無事に進一は帰ってきたものの、身代金は奪われてしまった。世間の人たちは自分の全財産を擲ってでも他人の子供の命を救った権藤に好意的だったが、会社の重役たちや債権者たちはどこまでも冷酷だった。
このままでは近いうちに権藤の屋敷は抵当に入れられ、彼自身も会社から追放されてしまう。
何とか権藤を救おうと刑事たちは一丸となって犯人逮捕に尽力する。
捜査報告のひとつひとつまでが丁寧に描かれているのがとても印象的で、こうした細部まで徹底的に描くからこそ黒澤映画のドラマはどれも人を惹き付けるのだろうなと思った。
徐々に犯人の行動が絞られていく様は見応えがあった。高台の上に建つ権藤の屋敷からは犯人の姿は見えない。しかし恐らく犯人が暮らすであろう高台の麓に拡がるバラックの一群からは権藤の屋敷が良く見える。
実は『天国と地獄』というタイトルが表しているのは、この権藤の屋敷と粗末なバラックだらけの貧民街の対比である。
川は澱んでゴミが浮かんでおり、いかにも不衛生な貧民街の描写が印象的だが、高度経済成長の日本ではまだまだこのような光景が一般的だったのだろう。
彼らの目から見たら、これみよがしに高台に君臨する権藤の屋敷はさぞ天国のように見えたことだろう。
主犯として特定された竹内がここでどのような人生を送ってきたのか、それは明らかにはされていないが、ラストに彼が格子を掴んで見せる絶望的な表情がそれを物語っている。
地獄のような日々を送ってきた者の中には、持てる者に対する理不尽な恨みを抱く者が時として生まれる。
観ているこちらも初めは竹内にも何か余程の事情があるのだろうと彼の思いに寄り添おうとしてみるが、その思いは呆気なく突き放される。
彼は共犯者をかなり巧妙なやり口でヘロイン中毒にさせて殺害した。
警察は共犯者がまだ生きている体で彼に罠をかける。
竹内が確実に殺せる量を知るために中毒の女にヘロインを摂取させて殺害するシーンはおぞましい。そして中毒者で溢れかえる小金井町の病的な描写がショッキングだっ。
この映画では決して竹内のような人生の選択をした者に慈悲は与えない。
戸倉もただ竹内を逮捕するのではなく、権藤が味わった地獄に報いるほどの極刑を与えるやり方で逮捕しようとする。
しかし世の中にはこうした闇を抱えた人間がいるということ、そして彼らが生まれてしまう要因は今の社会にあるのだということを黒澤監督はこの映画の中で訴えかけているようにも思える。
結局3000万円が無事に戻ってきても、時既に遅しで権藤の屋敷が抵当に入れられてしまうというのも残酷な結末だと思った。
しかしそれでも世間の人々は彼を見捨てはせずに、彼に新しく生きる道を用意していたというのが救いでもあった。
権藤役の三船敏郎、戸倉役の仲代達矢、玲子役の香川京子、そして竹内役の若き日の山崎努と、主要キャストの存在感は然ることながら、「ボースン」という渾名で呼ばれる田口役の石山健二郎、木村功や加藤武、三橋達也に、ちょい役で登場する東野英治郎、沢村いき雄、藤原釜足までキャラクターが立っていて、このような役者の層の厚い作品は今ではお目にかかれないと思った。

2020/11/29

2020/11/29

93点

テレビ/有料放送/WOWOW 


また観た

何度目だろう。ストーリーも結末も知っているが、ぐいぐい引き込まれていく。
ラストの山崎努の演技が鬼気迫る。

2020/10/24

75点

選択しない 


刑事ものの傑作

ネタバレ

冒頭から犯人を特定するまでは、そのスピード感とサスペンスタッチの展開は100点に値する。特に捜査チームが一丸となって犯人逮捕への手がかりを探ろうとする部分は、刑事映画の手本のように完成度が高く見応えがあった。7センチ幅のカバンとこだまの窓、公衆電話の特定、犯行に使われた車の特定、江ノ電の音、江ノ島近くなのに江ノ島が見えない場所、魚市場での魚が付着した泥、ヘロインの純度の違い・・・など。刑事ものの傑作である作品には間違いはないと思う。
ただ、犯人が特定されてから最後までは興奮がちょっと失速してしまった(私にとって)。その理由は以下の通り。
・刑事の独断で15年の刑期では軽すぎるので、死刑にするために犯人を泳がせたのはありか?
・犯人を尾行して、犯人が麻薬入手してから娼婦殺人までが長すぎる(だれる)。
・そもそも犯人の犯行理由が納得できなかった。ラストシーンの面会場面で、金持ちへの羨みからの犯行ということが分かるが、犯人はインターンであり、そもそも当時は大学へ進学させる家庭は貧乏なはずがない。特に医学部(国立でも)に入学させる家庭はかなり裕福なはずなので矛盾を感じた。