北村和夫

|Kazuo Kitamura| (出演/音楽)

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本名
出身地 東京市小石川区(現・東京都文京区)
生年月日 1927/03/01
没年月日 2007/5/6

略歴▼ もっと見る▲ 閉じる

東京市小石川区(現・東京都文京区)の生まれ。医院を経営していた父・肇と母・喜代の二男一女の次男。都立第十一中学(現・江北高校)を1944年に卒業し、兵役を逃れるため理工系に進もうと研数専門学校、次いで東京工業専門学校に入るが終戦を迎え、47年、日本大学三島校舎・理工学部予科に入学する。50年の卒業直前に見た文学座公演『キティ颱風』に刺激されて新劇俳優を志望。卒業と同時に文学座付属演劇研究所に入るとともに、早稲田大学文学部芸術科(現・演劇科)4年に編入する。そこでは早大演劇研究会を組織、次いで小沢昭一、今村昌平、加藤武、大西信行らとオスカー・グループを結成して演劇活動に熱中する。翌51年3月、大学と研究所を同時に卒業して文学座に入り、飯沢匡・作『崑崙山の人々』で初舞台を踏む。53年にテネシー・ウィリアムズ作『欲望という名の電車』、54年に森本薫の『女の一生』に出演し、63年の文学座分裂後も杉村春子の相手役をつとめた。映画初出演はその間の53年、文学座ユニットの今井正監督「にごりえ」の第2話「大つごもり」で、車夫を演じた。その後、豊田四郎監督「暗夜行路」59、小林正樹監督「人間の條件」60、黒澤明監督「天国と地獄」63、成瀬巳喜男監督「乱れる」、木下惠介監督「香華」64、田坂具隆監督「冷飯とおさんとちゃん」65、五所平之助監督「女と味噌汁」68、山本薩夫監督「金環蝕」75など錚々たる監督の作品に脇役出演して巧演。一方、学生の頃からの仲間である今村の監督作品では、「にっぽん昆虫記」63、「赤い殺意」64、「“エロ事師たち”より・人類学入門」66、「神々の深き欲望」68などにテーマの核心を担う役で相次いで出演。中でも「にっぽん昆虫記」での農夫、「神々の深き欲望」での技師は強烈な印象を残した。79年には今村監督が10年ぶりにメガホンを取った「復讐するは我にあり」で、小川真由美の旦那役に扮して重厚な愛憎劇に深みをもたらす。今村と師弟関係にあった浦山桐郎監督のアニメーション作品「龍の子太郎」79では黒鬼の声を担当し、今村の直弟子である長谷川和彦監督の「太陽を盗んだ男」79では、犯人にきりきり舞いさせられる警察庁長官役で権力者の本質に迫る快演を披露した。相米慎二監督「セーラー服と機関銃」81では、ヒロインの薬師丸ひろ子に襲いかかる物産会社の悪徳社長を熱演。80年代に入ってからは滋味豊かな老人役が多くなり、生島治郎の告白的恋愛小説を舛田利雄監督が映画化した「片翼だけの天使」86ではヒロインの相談役になる挿絵画家、78年にテレビ朝日開局20周年記念として製作され、88年に劇場公開もされた千野皓司監督「密約・外務省機密漏洩事件」では、新聞記者に扮して年輪を感じさせる好演を見せた。森田芳光監督「悲しい色やねん」88のやくざの親分、伊丹十三監督「あげまん」90の国会議員役などの助演を経て、井伏鱒二原作、今村監督の「黒い雨」89での田中好子演じる被爆したヒロインを思いやる叔父・重松役は、原爆に対する深い怒りと悲しみを体現し出色だった。中堅、ベテランを問わず善玉から悪役まで硬軟さまざまな演技で幅広いバイプレーヤーとして活躍した。舞台の代表作は『華岡清洲の妻』の清洲、『東海道オランダ怪談』の南北・伊右衛門、今村演出で初のひとり芝居に挑んだ『東京夢幻絵図』91、清水邦夫・作『血の婚礼』98など。80年に紀伊國屋演劇賞、83年に芸術祭賞、89年紫綬褒章をそれぞれ受けている。テレビでは、NHK大河ドラマに第1作の『花の生涯』63から毎年のように顔を見せ、『徳川家康』83、『翔ぶが如く』90、『八代将軍吉宗』95、『葵・徳川三代』00、『武蔵/MUSASHI』03、『功名が辻』06など近年まで多数出演。そのほか、日本テレビ『男嫌い』63、『心の旅路』75、TBS『楡家の人々』65、『女たちの忠臣蔵』79、NET(現・テレビ朝日)『氷点』66、フジテレビ『白い巨塔』78、NHK『おしん』83、『花へんろ』85などでも好助演し、晩年はNHK『ちゅらさん』01~07の元外科医の老人・島田大心役が評判となった。2007年5月6日、肺炎による呼吸不全のため死去。その前年に亡くなった今村昌平の一周忌を目前にしての死だった。享年80歳。息子・北村有起哉、娘・北村由里はともに役者の道に進んでいる。

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2006年8月上旬特別号

巻頭特集 追悼 映画監督 今村昌平:追悼インタビュー 北村和夫

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