終電車

しゅうでんしゃ|Le Dernier Metro|----

終電車

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レビューの数

58

平均評点

72.3(227人)

観たひと

375

観たいひと

35

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ラブロマンス / ドラマ
製作国 フランス
製作年 1981
公開年月日 1982/4/10
上映時間 132分
製作会社 レ・フィルム・デュ・キャロッス=アンドレア・フィルムス=SFP=TF1
配給 東宝東和
レイティング
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

ナチ占領下の混乱のパリを舞台に劇場を守る一人の女優の愛を描く。製作・監督は「緑色の部屋」のフランソワ・トリュフォー、脚本はトリュフォーとシュザンヌ・シフマン、台詞はトリュフォー、シフマンとジャン・クロード・グランベルグ、撮影はネストール・アルメンドロス、音楽はジョルジュ・ドルリュー、編集はマルティーヌ・バラーク、マリー・エーメ・デブリルとジャン・フランソワ・ジル、美術はジャン・ピエール・コユ・スヴェルコが各々担当。出演はカトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ジャン・ポワレ、ハインツ・ベネント、アンドレア・フェレオル、サビーヌ・オードパン、ジャン・ルイ・リシャール、モーリス・リッシュなど。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

第二次大戦中、ナチ占領下のパリ。人々は夜間外出を禁止され、地下鉄の終電車に殺到する。この混乱の時代は、しかし映画館や劇場には活況を与えていた。そんな劇場の一つモンマルトル劇場の支配人であり演出家のルカ・シュタイナー(ハインツ・ベネント)は、ユダヤ人であるため、南米に逃亡し劇場の経営を妻であり看板女優のマリオン(カトリーヌ・ドヌーヴ)にまかせていた。彼女は、今、ルカが翻訳したノルウェーの戯曲『消えた女』を俳優のジャン・ルー(ジャン・ポワレ)の演出で上演しようとしていた。相手役には新人のベルナール・グランジェ(ジェラール・ドパルデュー)が起用された。ジャン・ルーは、この戯曲の上演許可のため、ドイツ軍の御用批評家ダクシア(ジャン・ルイ・リシャール)とも親しくしているというやり手である。連日稽古が続けられるが、稽古が終ると、ベルナールはカフェで数人の若者たちと会って何か相談し合っており、一方マリオンは暗闇の劇場に戻って地下へ降りていく。地下室には、何と、南米に逃げたはずのルカが隠れていたのだ。夜マリオンが会いに来るのを待ちうけ、昼は、上で行なわれている舞台劇の様子を通風孔の管を使って聞き、やってくるマリオンにアドバイスを与えた。つまり、彼は地下にいながら、実質的な演出者だったのだ。初演の日、『消えた女』は、大好評のうちに幕をとじるが、ルカは満足しなかった。そして、翌日の新聞でダクシアは酷評を書いた。マリオンは、舞台の稽古をしながら、いつしかベルナールに惹かれている自分を感じていたが、あるレストランで彼がダクシアに酷評の謝罪を迫ったことで彼に怒りをおぼえた。『消えた女』は好評を続けるが、ベルナールがレジスタに参加するために劇場を去ることになったある日、初めて会ったルカから「妻は君を愛している」と言われ動揺するベルナール。そしていよいよ彼が去る日、二人ははじめて結ばれた。連合軍がノルマンディーに上陸し、パリ解放も目前に近づいた。ルカは屋外に出ることが実現し、ダクシアは国外に逃亡する。そして、マリオンは、愛する夫の演出で、愛する若手俳優ベルナールと共演し、艶やかな笑顔で観客に応えているのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1982年6月上旬号

外国映画批評:終電車

1982年5月上旬号

外国映画紹介:終電車

1982年4月上旬号

グラビア:終電車

特集 終電車:作品批評

特集 終電車:作品批評

特集 終電車:作品批評

特集 終電車:分析採録 終電車

1982年1月上旬号

カラー・グラビア:終電車

グラビア:終電車

1981年10月上旬号

特別グラビア:トリフォーの「終電車(デルニュ・メトロ)」を観て

2023/10/01

2023/10/01

85点

選択しない 


奇妙な三角関係

ネタバレ

第二次対戦中、ナチスドイツ占領下のパリ、モンマルトル劇場の支配人でユダヤ人の劇作家ハインツ・ベネントとその妻で国外に逃した旦那の代わりに経営者となった女優のカトリーヌ・ドヌーブ、男優のジェラール・ドパルデューの三角関係を描いており、恋愛ドラマでありながら圧制下の中でも演劇への情熱を失わない気骨の物語になっている。
 国外に逃したというのは嘘で劇場地下室にいる旦那が、舞台の稽古をしている二人の声を聴いて互いに惹かれあっているのが分かるというのが上手い。しかもドパルシューは実はレジスタンスなのとゲシュタボ、ドイツ寄りの批評家などが絡み合ってサスペンスな展開もあるので目が離せない。ラストは舞台劇を上手く使ってコチラを楽しく騙してくれる。フィナーレもドヌーブを、中心に三人並んで洒落ている。

2023/06/06

2023/06/07

60点

テレビ/無料放送 
字幕


触れ合って通じる,閉塞からの脱出

占領下のパリには閉塞感が感じられる.そうした中にも蟠る表現への欲望があり,その表出をめぐって,演出家のルカ・シュタイナー(ハインツ・ベネント)のとっていた方法は特異とも言えるのかもしれない.ユダヤ人である彼は,ナチスからの迫害を受けながらも,モンマルトル劇場の地下で潜行というよりも引きこもり,主演女優の妻マリオン(カトリーヌ・ドヌーヴ)の世話を受けながら,彼女の立つ舞台劇「消えた女」の演出に口を出す.残したメモのほかに妻を通じてその演劇を自分のものにしようとしている.
散髪も妻がしてくれる.ラジオや舞台と繋がった通気管を通して辛うじて世間の空気を吸っているかにも見える.あるいはマリオンの口づてにキスをしながら空気を吸い込んでいるのかもしれない.
7キロのハムがチェロのケースに閉じ込められる.同様にパリの夜間は外出も出来ず,終電車や映画館がそれらの閉塞をかたちづくる.停電は始終起こっており,劇中だけでなく,生活の中にも停電とそれに応ずるロウソクの灯火が画面にオレンジの照明をもたらす.
ベルナール(ジェラール・ドパルデュー)も,あるいはそうした炎のひとつと言えるのかもしれない.終電車を逃したのだろうか,彼は上手に向かって歩き始める.そこには舞台衣装を担当する女性(アンドレア・フェレオル)がいて,彼女を口説こうどベルナールはしつこく追い回す.ベルナールは怪奇劇の出身で,やや怪異な風貌をもっており,マリオンの相手役となって舞台に立つ.舞台では,ルカの存在が意識されながらも,本来の演出家ジャン=ルー(ジャン・ポワレ)も「消えた女」に演出を加えている.占領による衝撃がこうした二重構造を生んでいるが,それは劇中劇でもあるのであって,映画の観客も含め,三重構造より以上の複層の物語構造があるようにも感じられる.
ルカにとって視覚は閉ざされており,聴覚が鋭敏になっているせいなのか,聞きたくもないことが聞こえてくる.ラジオのボリュームは上げられながらもオフにされることがある.「最低の批評家」とも言われるダクシア(ジャン=ルイ・リシャール)は,ルカの聞きたくない声を新聞を通じて届けることもある.とにかく売れたい女優(サビーヌ・オードパン)も忙しそうに舞台を掛け持ちし,遂には映画主演を果たそうとしている.
舞台からも灯火が消えようとしている.戦時に現れてきたヘッドライトを自転車漕ぎの発電で舞台を照らす.ランプが持ち出され,影絵の演出も用いられている.劇場は誰の物でもないと言われ,それでもドイツ軍には客席に指定席が用意される.聞こえてしまう音として,緊張を醸す音が所々に挿入され,サイレンが鳴り,轟音が鳴り,雷鳴が鳴り,機械音が響いている.
マリオンらは接触を嫌う.男を跳ね除けようともする.しかし,握手やキスで友愛的な感情が示されることもある.それが作為なのか不作為なのかは分からない,偶然に友愛への扉が開かれるようにも感じられる.しかし閉塞への打破の手がかりはその僅かな接触に賭けられているようにも見えるのである.

2023/03/30

2023/04/15

80点

テレビ/無料放送/その他 
字幕


消えた女

モンマルトル劇場の舞台劇「消えた女」の公演準備から成功までの演出家・俳優を描く映画内舞台劇。
フランソワー・トリュフォー監督晩年の大人の愛を描いた作品である。
時は第二次世界大戦末期、フランスがナチスドイツに陥落され、この国でもユダヤ人が迫害される。モンマルトル劇場の劇場主兼演出家のルカ・シュタイナー(ハインツ・ベネット)は、ユダヤ人であったため、海外逃亡したことになっていたが、実は劇場の地下室で生活していた。劇場は妻の女優マリオン・シュタイナー(カトリーヌ・ドヌーヴ)が地下の夫のアドバイスで実質運営を行っていた。
新演目「消えた女」に男優としてベルナール・グランジェ(ジェラール・ドバルデユー)が起用される。ベナールは、ナチスをひどく嫌い、レジスタンス運動に賛同していた。「消えた女」を演じる内にマリオンとベナールは、実生活でも愛を感じるようになってくる。
「消えた女」は、大成功。しかしナチスの腰巾着でフランスの演劇可否のキーを握る、批評家のダクシア(ジャン・ルイ・リシャール)だけは、この作品を酷評した。これに腹を立てたベルナールは、雨の夜にダクシアに暴力を振るったため、劇場を没収するとの脅しに発展。この行為を咎めたマリオンと仲たがいし、ベルナールは劇場を去る。
それから時は過ぎ、ドイツは敗戦、フランスに日常が訪れる。レジスタンスで負傷し病院に入院しているベルナールの元にマリオンが訪れ過去のわだかまりを解消する。実はこれがルカの演出した新しい舞台であったと言う、しゃれた終わり方であった。
 批評家のダクシアがキーマンとして描かれるが、この点はトリュフォー監督自身が映画監督になる前に、批評雑誌「カイエ・デュ・シネマ」の編集長をやっていたことも関係しているのでは。
 カトイーヌ・ドヌーヴの美しさは最高の頃ですね。
 ルカが隠れている地下室話。ちょっと出来すぎでしょう。あんなにリハーサル忠に主演のマイオンが抜け脱して地下室を訪れたり、地下で料理したりすると匂いも漏れるでしょう。一度ゲシュタポが捜査に来るが、あの短時間で元の状態に戻すことは不可能です。ここだけダメ出し。

2023/04/02

2023/04/02

70点

選択しない 
字幕


稽古の相手はサンドニにいる

トリュフォーってこんなにメカニカルな作品を撮るひとだったのですね。地上と地下、劇中の劇、ドイツとフランス、仕掛けがたくさん。

「あなたのお相手をするひとはSaint Denisにいるわ」で出てくるサンドニとはパリ北東の街で、ニキータの冒頭にも出てくる。自分が訪れたときには平日の昼間なのに何もしていない青年・中年男性が大勢ゴミコンテナに座って、じーっとこっちを見ていて不穏だった。街娼も多いのだろう。

地下に秘密の部屋があるのは、アンネの日記やオペラ座の怪人、「アンダーグラウンド」みたい。
キャバレーで歌われるBei mir bist du schoenがぴったり。

絵としては'60年代のように見えましたが、これで'81年の作品とのこと。意図して古めかしい演出にしたのでしょうね。

2023/03/13

2023/03/13

83点

テレビ/有料放送/ムービープラス 
字幕


ナチス占領下のパリで奮闘する女性劇場支配人をカトリーヌ・ドヌーヴがクール美で好演

ネタバレ

正直に書くと、観ている最中は感情移入出来なかった。それは、マリオン(カトリーヌ・ドヌーヴが演じる)とベルナール(ジェラール・ドパルデューが演じる)が深い処で(表面上は分からないが)好意を抱き合っていることを軽視していたから。演出上は、充分匂わせているのだが、私は、”ナチスとの心理的or肉体的な激しい闘い”の様な描写を頭のどこかで期待していた(その当時を描いた映画で私が観たのは、概ねそうで、それで私は感動していたので、、、)のだが、意外とあまり激しくなかったのに拍子抜けしまっていた。
でも、改めて、当作品を反芻してみると、そんな真っ暗なご時世において、劇場を存続させよう(or 自分の夢を実現しよう)と頑張る人達の群像劇として、個々の人物をとても上手く描写している、と感じた。いやはや、まだまだ自分の映画鑑賞修行の足りなさを、これを書きながら、実感している。
マリオンは、ユダヤ人の夫(劇場支配人兼演出家)を地下に匿って、自分が表立って劇場支配人を務めている。才能ある夫を尊敬し、愛している。でも、やはり辛いでしょう。常に夫の身が危険で、(自分の気持ちとは正反対な)政治的な身の振り方も色々としなければいけない。長期の地下生活に夫のイライラも募る。そんな時に現れた才能ある役者ベルナール。マリオンが一瞬彼を見る眼差しが語っていましたね、彼女の中に芽生えた感情を。でも、二人はお互いの好意を態度に表しません。マリオンは、稽古では自分の顔をベルナールに触れさせない。一方の、ベルナールは他の女性達は軽い感じで口説くが、マリオンは口説かない(まぁ、支配人だから、役を下ろされたら困る、と考えていたかもしれないけど)。⇒そんなサインに敏感に気付いて、いや、気付いていたのだが、それを味わおうとせず、”ナチスとの闘い”ばかりを気にしていた事を勿体なく思ってます。実際には、マリオンは闘っていましたからね。劇場を存続させるって、本当に大変だったでしょう。食料だって乏しいし、劇団関係者を養わなければいけない。そのためには、言い寄ってくるナチス支持の劇批評家とも会話しなければならない(でも、毅然とした態度をとるマリオン)。中には密告者も表れて。。。だからこそ、ラストシーンのカーテンコールでの(夫とベルナールと手を繋ぎ)彼女の誇らしげな笑顔(多少、控えめなのが、また良い)が非常に生きてくる、こうやってレビューを書きながら、感動を覚えていきました。こういう内面的な闘いをトリュフォーは描きたかったんでしょうね。だからこそ、ベルナールに惹かれる妻を理解する夫も私は理解出来たし、稽古期間中の懇親会で(ベルナールが別の女性を連れて来た)行き釣りの男と夜遊びするのも、観客の私は目をつむって見てました。その後、ノコノコと会いに来た行き釣り男を、マリオンはベルナールに追い払わせたし(ベルナールの追い払い方が、嫌味たっぷりで良かった)。そう言えば、ベルナールが批評家を殴った理由が、マリオンの演技を酷評したからですね。好意が行動に現れてますね。
ベルナールはレジスタンスに入るかどうか決め兼ねていますが、友人が逮捕されて、遂に入ろうと決心し、他の役者に引き継いで劇場を去ろうとします。去るろうとする理由を言わない彼。死ぬかもしれないから、敢えて言わなかったのかな。うーん、味わい深いなぁ。
そう言えば、夫の替わりに演出をするジャン=ルーだって、劇場を守る為に頑張ってましたよね。ドイツ軍と上手くやって。その影響でパリ解放後にはフランス軍に捕まりましたが。それぞれの闘い方があった、そんなことを気付かせる良い作品でした。

ベルナールが批評家を殴ったシーンで、マリオンは真剣にベルナールに怒りを表します。「今迄の努力が無駄になるじゃない」って。彼女は闘っていたんですね。そして、パリ市民は、ナチス占領下でも、普通さを維持しようと劇場に足を運んでいた、と言います。その様なパリ市民の心持ち・態度が、パリを解放した下地になったのでしょう。そして、それを支えた芸術関係者に対するトリュフォーの敬意を込めたオマージュだったのですね、この作品は。

2022/12/17

2022/12/19

80点

映画館/千葉県/キネマ旬報シアター(旧TKPシアター柏) 
字幕


ドヌーブの美しさに溜息

何回目かの鑑賞。やはりこの映画は大人の映画である。本当に久しぶりに大メロドラマを大女優の主演で観た。もちろんトリュフォーの演出を素晴らしいのだが何と言ってもドヌーブの美しさである。