９・11から早10年強。その後もアフガン戦争、リーマン・ショック、東日本大震災など、世界は混沌を極めていく一方だ。非日常が日常と化した現在、新たな２０１３年を生き抜くヒントとサバイバル術を映画から学びたい。

　まず、見習いたいのは中年以降高年以下の胆力。それぞれシリーズ最新作の公開が控える「ダイ・ハード」（88）と「96時間」（08）は、そうした“オヤジ力”のバイブルともいうべき傑作アクションだ。ベテランとして培ってきたスキル、知恵、勘、根性を総動員して悪を蹴散らしまくるブルース・ウィリスとリーアム・ニーソンの姿を観ていると、ちょっとやそっとの危機なら乗り越えられるような気がしてならない。定年引き上げ政策で65歳以上も現役とされ、オヤジだからとノホホンとしてられない時代だけに観ておくべし。

　オヤジ同様、女性も孤軍奮闘を強いられている。某国民的アイドルグループだって、シングル曲を歌うメンバーに入るためにジャンケンして戦うくらいである。というわけで、強い女性になりたければ「エイリアン」（79）を観るに尽きる！　凶暴凶悪にも程があるエイリアンに仲間たちが次々と襲われて一人だけ生き残り、まさに公開時キャッチコピー“宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない”状況に陥ったリプリー。そんな彼女が、孤独と絶望に打ち勝つことでエイリアンをも倒す姿にはおおいに影響されたいところ。プラスして、どんなにヤバくても飼い猫も見捨てない優しさも見習うべき。本作の前日譚にあたる「プロメテウス」（12）のヒロイン、エリザベスもかなりの戦力を見せつけているので、併せてチェックしておこう。

　今年同様、来年も弱々しそうな日本経済。これを心配するビジネスマンには「ビッグ」(88)を。35歳の姿になった12歳の少年が玩具メーカーに潜り込み、童心フルスロットルなアイデアを繰り出す姿からは、いまこそ既存概念を捨てる姿勢や原点回帰な着想が経済の低迷を打ち破るのに必要だと教えられる。

　さらに、新年を迎える頃に気掛かりなのがインフルエンザの流行や新型ウイルスの発生。そこで勧めたいのが、謎のウイルスに感染したロンドン市民がゾンビのごとく暴れ回る「28日後...」（02）だ。さすがにインフルエンザで人間はゾンビ化しないだろうが、とんでもないウイルスがパンデミックしないとは言い切れない。舞台のロンドンを東京に置き換え、シミュレーションしながら観るべし……と、試しに言ってみる。

　そして、そのまんまサバイバル指南劇となっているＴＶシリーズが、スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮の『ＴＥＲＲＡ ＮＯＶＡ／テラノバ』。人口爆発と環境破壊で地球が壊滅寸前に陥った２１４９年から白亜紀へと移住団を送り込む設定から、ありとあらゆる種類の恐竜と戦うという設定まで、どこを切っても直球のサバイバル・アドベンチャー。純粋な娯楽作だが、極限状況下に置かれた者たちをめぐるドラマ、イデオロギーの違いから引き起こされる移民グループ同士の対立など、たくましく生きるためのヒントに繋がるような要素は多い。

　ここまで書いておいてなんだが、映画を観るだけでサバイバル術を習得できるとは思えない。ただ、挙げたような視点で作品と対峙する余裕みたいなものを持っていれば、厳しい世を渡り歩いていける気はする。

（キネマ旬報2013年1月上旬号掲載）