人間臭さが勝因

　「ゴジラの骨を元に兵器（機龍）を作るのは良くない。骨を持つことは死者を冒涜するので、海に返さなければいけない。放棄した暁には、モスラが代わって日本を守る」という小美人の提案が発端となっているストーリー。
　彼女たちの主張の根拠が宗教的であるので、その案を評価するにおいて説得力が弱いことが、ストーリーの設定としてちょっと問題。
　また、「日本は武力増強するのは良くない。核武装の案は放棄しなければならない。それが守られる限り、アメリカは日本を守る。」みたいな現実と重ねることもできるのだが、本作は（モスラとの）集団的自衛権や個別的自衛権の選択の葛藤があることは示していても、その是非は示してないので、政治的要素があるとしても問題ではない。

　そんなことより、本作が観ていて熱く感じるのは、登場人物たちが自分たちの出来る範囲において、精一杯に頭や体を働かせて頑張っているからだろう。
　怪獣映画って、怪獣の比重が大きくなり怪獣が暴れるシーンが多くなりがち。
　ストーリーも、人類全体の問題を描くなど大構えになると、結局は相対的に存在感の薄くなった個々の人々が怪獣による破壊と直面するだけの大味な映画になって、実際そんな不満を感じる怪獣映画が多かった。

　怪獣映画も、人間臭いドラマを欠いてはいけないと改めて思った。