パスワードを忘れた方はこちら
※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。
メールアドレスをご入力ください。 入力されたメールアドレス宛にパスワードの再設定のお知らせメールが送信されます。
パスワードを再設定いただくためのお知らせメールをお送りしております。
メールをご覧いただきましてパスワードの再設定を行ってください。 本設定は72時間以内にお願い致します。
戻る
KINENOTE公式Twitter
映画・映画人登録リクエスト
ジュリーは沈黙したままで
Like2
わずか90分ほどの作品だが、驚くほど退屈で、観る者に苦痛さえ与える映画だ。特別な感動もなければ、ドラマが何かを提示するわけでもない。後半でわずかに音楽が流れるが、それも効果音のように淡々としている。全く面白くない――そう感じる。 ところがである。 見終わった瞬間、不意に「17歳の瞳に映る世界」(2020)が頭をよぎった。あの映画もまた、ほとんどセリフがなく、少女の内面に秘められた秘密と苦痛を静かに描いていた。そう思い返すと、この映画が意図的に“語らない”理由が、ぼんやりと見えてくる。 ジュリーの沈黙と孤独とは何なのか。 新しいコーチのミッキーが、他の選手たちを集めてジュリーのサーブを褒める場面がある。ジュリーはそれを嫌い、ミッキーに異を唱える。彼女は目立ちたいわけではない。ただ、テニスをしたいだけの少女なのだ。だが実力をつけるほど、彼女は前のコーチであるジェレミーとの関係を断ち切らねばならなくなる。ジェレミーの教え子が自殺したという事実が、ジュリーの心をいっそう複雑にしていく。外見は大人びていても、心はまだ幼いままなのだ。 ほとんどセリフのないこの映画で唯一、感情の起伏があらわれるのは、クラス写真の撮影で全員が「ファック・ユー」と叫ぶ場面だ。ジュリーは成長の過程にあり、期待も高まるが、彼女の孤独は消えない。 ときおり登場する犬のマックスが、ジュリーの沈黙に寄り添うように歩く姿が印象的だ。彼女の心を唯一理解している存在のように見える。 大坂なおみが製作に関わった理由も、この映画の主題と無関係ではない。彼女自身がメンタルの問題に苦しみ、若い選手を支える立場にある。沈黙と内省を重ねる少女ジュリーの姿に、自身の経験を重ねたのだろう。 舞台がベルギーであることも、主人公の心情を象徴している。オランダから独立し、フランス・ドイツ・イギリスの狭間で揺れてきた国――他者に囲まれながらも自らの声を持ちにくい歴史を背負う土地だ。ジュリーがドイツ語の授業を途中で退席し、ドイツ語で説明を求められる場面にも、その象徴性がにじむ。 沈黙とは、言葉を失ったのではなく、語らないことでしか抵抗できない少女の選択なのだ。
鑑賞日
登録日
評点
鑑賞方法
送信