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ほかげ
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横たわる主人公の女性(趣里さん)の足元を映すファーストシーンからこの世界に引き寄せられる。この居酒屋に立ち寄る清濁併せ呑むような人物たち。復員兵は金もないのにここを訪れ、明日は金を稼ぐと宣言する。この店のイメージが強烈。ふすまや天井に映される亡霊のようなシミやカビは、この映画が、というよりも、戦争が狂気をもたらすことを立証している。 塚本晋也監督は自らカメラを持ち、俳優の表情に迫る。戦争孤児の少年を演じる塚尾桜雅さんがすごい。強い目力だけでなく、その表情の示す恐怖と脅威。スクリーンを見る側を強く見返す目は、この映画を通じて我々が時空を超えて「底の抜けた社会」で無自覚に戦争に加担しようとすることに目を光らせているように思える。 少年が手にしているピストルを巡って、森山未來さん演じるテキヤが何をしようとするのかが後半の物語。彼は彼の上官にピストルを突きつけ、動かなくなった腕と反対の手でピストルを上官に突きつける。そして上官の命令で死んでいった仲間の復讐のために引き金を引く。最後の1発をどこに向けるか、という目を覆いたくなるような恐怖のシーンは耐え難いほどのインパクトを残す。 趣里さん演じる女性が営む居酒屋に訪れる復員兵が、大きな音に過剰反応するシーンは真実だろう。この国に限らず、戦争体験でPTSDになるのは「アメリカン・スナイパー」などでも示された。趣里さんは痛みを抱える復員兵にも容赦なく金を要求する反面、彼が子供に算数を教えているのを見て涙する。 趣里さんが少年を愛し、自分のものにしようとする欲求と、彼女が金のために体を売るというジレンマは、生きるためならどんな屈辱をも受け入れるという当時の状況を如実に描く。少年が闇市で虐げられながら生きていこうとして雑踏に消えてゆくラストは胸が熱くなる。彼は幻だったのか。 「底が抜けた社会」に突きつける強烈な衝撃作であり、大傑作。心から感動。
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