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せかいのおきく
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おきくの父親(佐藤浩市さん)が、「せかいを知ってるか?」とおわん屋のちゅうじ(佐藤浩市さんの息子寛一郎さん)に問うシーンがラストと重なる。この映画で個人的に最も好きなシーンは真木蔵人がおきく(黒木華さん)を励ますシーン。父の無念で自らも喉を切られ、声を出せなくなったおきくに「おだんごたべたーい」と明るく諭すシーンがとてもいい。 人間の生理現象を支えるおわん屋の物語でありながら、この作品の主題には落ちぶれて浪人になった父源兵衛と元同僚の武士との果たし合い。わずかなシーンだが、この背景に「安政の大獄」があるのは明らかだ。映画では全くそのことを説明しないが、源兵衛の強い姿勢が幕府の弾圧に押しつぶされたことを示す。ここに現代性がある。 おわん屋のふたりが行く所行く所で痛めつけられる現実もまたリアル。おわん屋がカネを払って糞便を持ち帰る、ということすら知らなかった。今はカネを払って引き上げてもらう関係だ。それほど当時、末端の仕事へのリスペクトがなく弾圧されていたことを知る。 そう、これは弾圧の映画なのだ。 その狭間で父を失いおわん屋のちゅうじにいつしか恋い焦がれるおきくのせかいを誠実に描く。特に声を出せなくなってから孤独なおきくが、周囲のはげましで立ち直ってゆく過程は胸が熱くなる。さいごにちゅうじの家を尋ねて雪が舞うシーンは印象的だ。ちゅうじを待つ間、おきくの足があかぎれで黒くなっているのも切なくなる。 この映画をモノクロで撮ったことに意味がある。そして時々カラーで映すシーン(糞便や炭やろうそく)の印象も鮮明だが、見終わって最も脳裏に残るのは、おきくの桜色の衣装だ。
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