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沈まぬ太陽
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何しろ原作が原作なので、原作との単純比較は意味がないと思います。 となると、映画としてどれほど原作に忠実でどれほどデフォルメできるかは、脚本の力が相当必要だと思うんですね。 冒頭の短いカットは、原作を読んでいない方には???という感じがすると思うんですが、原作を読んだ者としては大変良くできている(のではないか?)と思わせる始まりでした。 御巣鷹山の話と、転勤で赴任していらアフリカの話をカットバックして、123便が御巣鷹山の墜落する轟音と、アフリカで像を仕留める瞬間の銃声が重なり、この壮大なドラマが始まります。 大変”映画的”で素晴らしいシーンだと思います。 ただ、残念なことに、惹きつけられたのはこのシーンだけで、あとは増長な場面が多く、オールスターが溢れるドンブリ映画になってしまいました。 これはむしろ映画監督の力量。エネルギーのポリシーが生み出すもので、失礼ながら若松節朗監督には荷が重かったのではないでしょうか。むしろこれほどまでに大勢の職業俳優を使わなくても、もっと臨場感溢れる映画が作れたのではないでしょうか? いくつかの素晴らしいシーンはあるんですね。 1、父親のメモを読みながら慟哭する息子(ワンカットで撮っています) 2、木村多江さんが、恩地(渡辺謙)を相手に喫茶店で心情を吐露するシーン(これもワンカット) こういう緊迫感がみなぎるいくつかのシーンはいずれも良くできていて、見ている側もこみあげてくるものがありました。(正直言って泣けました) 反面、イモ役者のイモ演技ぶりがとても辛くて、これは演出というよりキャスティングの失敗だったように思います。 例えば三浦友和。若い頃も重役になってからも、いずれも同じ演技になっていて、しかも棒立ち。これは演技とはいえませんね。セリフを言っているだけ。ひどい演技だった。 それと石坂浩二。関西企業から引き抜かれたのに、関西人の雰囲気が全くない。そのうえ関西弁が機能しておらず、恩地(渡辺謙)の娘(戸田恵梨香)の嫁ぎ先のお父さん(桂南光)の方がよっぽどそれらしかった。勿論、国見会長とはキャラが違うにせよ、あまりにもイメージが違いすぎましたね。 そんな中、柴俊夫の役は実に見事でした。彼にこの役は合うのかなぁと心配しましたが、実に見事に悪役を演じきりました。原作では蛇のように鋭い目つき、とありますが、上手に演じていたと思います。 ということで、言い出すとキリがないのですが、残念ながら、角川から依頼されて作ったこの作品ですが、この監督にはとても手に負えない作品だったということでしょう。 もう少し工夫が必要だったように思います。
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