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17歳の瞳に映る世界
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彼女たちが堕胎のためにニューヨークの病院に行くと、病院の前で反対運動をしている人たちがいた。このシーンは、『スワロウ』という映画にも出てきて、あの映画も確かニューヨークが舞台だった。『スワロウ』では貧しい生まれの女性が、エグゼクティブの男性と出会い子供を”産まされる”というジレンマに陥る映画だったが、ベースは同じだ。男女の理解があって子供をつくるのではなく、性処理の結果として生まれてくる子供を”産まなければならないのか?”という問いかけがこの映画の主張であろう。 しかし、 この映画自体は全く主張しない。淡々と人工中絶するために遠出する少女といとこのロードムービーで、しかも全くドラマ性がない。唯一この映画が主張するシーンはワンシーンしかなくて、それがタイトル(原題)の意味となっている。 (以下略) 17歳を題材とする名作は過去にもあった。キャリー・マリガンの『17歳の肖像』とオゾンの『17歳(2013)』などが代表作だと思うが、共通するのはいずれも大人になる瞬間を描いたものだ。大人と付き合うために背伸びする”女性”という視点は、自らの経験なども刺激して大勢の映画ファンを感動させた。しかしこの映画は17歳を題材にしつつ、これまでと大きく切り口を変えている。ダルデンヌ兄弟の『ある子供』という未成年の少年少女が生んだ子供を売る、という残酷な物語だったが、むしろ『4ヶ月、3週と2日』というルーマニアの映画に近い。 さらに、ハーベイ・ワインスタイン事件を契機に女性が男性から被ってきたストレスについての映画が極端に増えた、という事情もあいまって、このアメリカ映画が描く世界は貴重だ。ある意味でアメリカの分断を象徴している。ペンシルベニアでは許されない人工中絶を、いとこと2人でニューヨークで行おうとする旅だ。 映画は冒頭で主人公の妊娠したオータムという少女の家族らを描く。彼女の父親は娘の存在を認めず、母親も下の子供の世話でオータムを相手にしない。孤独な彼女が自ずと性に目覚めることを想像させる。地元ペンシルベニアで人工中絶を認められず、いとことアルバイト先のスーパーから金を盗んでバスでニューヨークに向かう。中盤は彼女たちがニューヨークと途方に暮れるシーンを描く。 全く抑揚のないこの映画は、まるでドキュメンタリーのようでリアルだ。そしてオータムがやっとの思いで訪れた病院で尋ねられるのが原題である。 Never Rarely Sometimes Always オータムは過去の性的行為などについて、この四択から答えを見つけ出さなければならない。このシーンがこの映画で最も辛く感動的なシーンだ。この少女を演じたシドニー・フラナガンの演技は圧巻である。 ワンシーンで彼女の表情だけを捉え、彼女はそれに応じるだけ。しかし性的暴力を受けたかどうかを聞かれた瞬間に言葉を詰まらせ慟哭する。ドラマとしての説明はこのシーンだけだ。ほかには映画的な説明やセリフはまったくない。このシーンだけでこの映画は十分説明を施している。すごいシーンだった。彼女が望まれない子供をお腹に宿してしまったことを、このワンシーンだけで決定的にに示す。 映画のタイトルの意味がこのワンシーンでやっとわかる。 かたやお金がなくなった2人は途方に暮れ、いとこのスカイラーは仕方なく下心ありありの男性にキスを強要されてそれに応じるしかない。駅の柱の影でそれを見ているオータムがキスを強要されるスカイラーに手を伸ばして小指を絡ませる。こういう状態でも何もできない歯がゆい環境がまた心を痛める。 女性が暴行を受けて望まれない子供まで中絶が許されないのか、といい問いは、中絶をテーマとしてるのではなく、女性が劣悪な立場で生きていくしかない社会がまだまだ存在することを見る側に突きつける。四択のうちひとつを選べば答えがでるのか?という問題ではない。しかし彼女に問う側は4つの選択肢でカテゴライズしようとする社会は、彼女の抱える問題を解決に導くものではない。 最初のシーンで彼女が学校のステージで歌うと「メス犬」と揶揄する声。そのステージを褒めようともしない父親。これらがアメリカの地方都市における現実であることを印象づけて、2人がニューヨークで様々な思いをするシーンをリアルに描く傑作である。
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