浪人の小谷善左エ門(中村梅雀)は、裏店の長屋で筆づくりの内職をして糊口をしのいでいる。同じ長屋に住む船頭の吉蔵(柄本佑)からは、一緒に暮らすお峯(安藤サクラ)の様子を見張るよう頼まれていた。吉蔵とお峯は元々船宿の女将と抱え船頭だったが、密通のうえに駆け落ちし、ここで隠れるように暮らしている。しかしお峯は退屈な日々に虚しさを感じ始め、気晴らしのため川向こうへと架かる橋を渡ってみたいとの思いに駆られており、居場所が露見することを危惧する吉蔵は橋を渡らないよう厳命。すきま風が吹きだした二人に、善左エ門はかつての自分と自らの手に掛けてしまった妻の姿を重ね合わせて見守るが……。