ロックンロールやTVが世界を席巻し、時代が古きを追い落とすように進む1950年代のパリ。昔ながらのマジックを披露する初老の手品師タチシェフ(声:ジャン=クロード・ドンダ)は、かつての人気をすっかり失い、三流の劇場や場末のバーでドサ回りの日々。そんなある日、スコットランドの離島に流れ着いた手品師は、やっと電気が開通したばかりの片田舎のバーで村人相手に芸を披露、喝采を浴びる。興奮冷めやらぬ村人たちの中で、貧しい少女アリス(エルダ・ランキン)は、手品師を何でも願いを叶えてくれる“魔法使い”と信じ、島を離れるタチシェフを追いかける。言葉も通じない二人は、やがてエジンバラの片隅で一緒に暮らし始める。落ちぶれた自分を魔法使いと尊敬し、甲斐甲斐しく世話を焼き甘えるアリスに、生き別れた娘の面影を見るタチシェフ。しかし、初めて都会へやってきたアリスにとって、街は見るもの全てが珍しく、新鮮な輝きに満ち溢れていた。そして、アリスを落胆させまいと、手品師は魔法の呪文で彼女が望むプレゼントを贈り続ける。だが時代遅れの彼に仕事は無く、やがて財布の中身も尽きた頃、成長し大人となったアリスは、恋を知り、手品師の元を巣立つ時がやってくる……。