平安時代末期、戦乱で荒れ果てた京の町。土砂降りの雨の降るある日、羅生門の廃墟で雨宿りをしていた旅法師(千秋実)と杣売(志村喬)はお互い首を傾げ、考えていた。そこに下人(上田吉二郎)が走り込んでくる。旅法師と杣売は下人に問われ、不思議な話を語り始める。都で名高い盗賊・多襄丸(三船敏郎)が、森の中で侍・金沢武弘(森雅之)とその妻・真砂(京マチ子)を襲った。盗賊は妻を犯し、夫を殺した。しかし検非違使が盗賊、妻、目撃者の旅法師と杣売を尋問し事件を取り調べると、それぞれの証言が食い違った。盗賊は、生き残った方に着いていくと妻が言ったので夫と対決し、夫を倒したが妻は消えていたと言う。妻は、盗賊に犯された自分に対する夫の蔑みに耐えきれず、自分を殺すよう夫に短刀を差し出したが、気がつくと短刀は夫の胸に刺さっていたと言う。そして夫の霊を乗り移らせた巫女(本間文子)は、妻が盗賊に夫を殺すよう頼むのを聞いて失望し、自分で短刀を胸に刺したが、意識が朦朧としているなか、誰かがその短刀を抜くのを感じながら絶命したと言う。それを聞いた下人は、杣売が短刀を盗んだのだろうとなじると、羅生門に捨てられていた赤ん坊の衣服を剥ぎ取って去っていった。杣売は、残された赤ん坊を育てる決意をする。