19世紀のフランス。エルヴェ(マイケル・ピット)は、エレーヌ(キーラ・ナイトレイ)と出会って結ばれた。二人が暮らす村には製紙工場が作られて栄えはじめるが、原料となる蚕の間に疫病が発生して危機を迎えた。完璧な絹をつくるための蚕卵を求めて、エルヴェは東の果ての国を目指して旅立つことになる。長く危険な旅路の末、幕末の日本へたどり着いたエルヴェを迎えたのは原十兵衛(役所広司)だった。彼のかたわらには、美しい少女(芦名星)がいた。エキゾチックな彼女の美貌に、エルヴェは心を奪われる。その想いは、蚕卵を手に入れてフランスに戻ったあとも深く心に残った。夫の変化に、エレーヌも気がつくがなすすべはなかった。ふたたび蚕卵が必要となり、エルヴェは二度目の日本の土を踏む。そこで再会した少女とエルヴェは、一夜の契りを交わす。別れ際、少女は付け文を手渡した。帰国後、日本語の手紙を判読してもらうため、日本人女性のいる高級娼館をエルヴェは訪れ、そこでマダム・ブランシュ(中谷美紀)に翻訳してもらう。「必ず戻ってきてください。さもなくば死にます」エレーヌへの愛と少女への想いに悩みながらも、エルヴェは三たび日本へ向かった。しかし、少女のいた村は襲撃されて焼け野原になっていた。購入した蚕卵も帰途で孵化して全滅し、失意のままエルヴェの旅は終わった。そんな彼を迎え入れるエレーヌ。再起したエルヴェのもとに、日本語で書かれた手紙が舞い込む。そこには、「私のことは忘れてください」とあった。エルヴェたちの幸福な日々は、エレーヌの死によってピリオドを打たれた。マダム・ブランシュを訪ねたエルヴェは、手紙は彼女が書いたものであることを確認する。それは、エレーヌの仕掛けた悲しい狂言だったのだ。そのときエルヴェは、いかに彼女がかけがえのない存在であったか悟るのであった。