春を待つ阿蘇山を、ひとり彷徨う16歳の少女─彼女の名は浅野歩美(木村文乃)。孤独感に耐えきれずに家を飛び出し、山中で意識を失い倒れていたところを装蹄師の桜田(犬塚弘)によって、彼が働く「阿蘇ふれあい牧場」へ運ばれる。牧場では、かつて競馬界で名調教師として名を馳せた安藤幹夫(勝野洋)とその家族、ある出来事をきっかけに過去を捨てた元高校教師、言葉を失った少年たちが暮らしていた。一命を取り留めた歩美は、しばらくそこで生活することを決意。阿蘇の雄大な自然の中、彼らの誠実な人柄にふれ、元競走馬メイワジョニーとの出逢いを通して、次第に心を開いていく。そんな矢先、「生きることを難しく考えるんじゃない」と励ましてくれた桜田の死を知り、歩美は深い失意の底に突き落とされる。生きる希望を見失った彼女に、再び生きる力を与えたものとは…。全てのものを包み込む雄大な自然、あらゆる悲しみを吹き払う清涼な風、正面からぶつかってきてくれる人々、そして心の慟哭を分かち合える一頭の馬。心身に深い傷を負った一人の少女は、かつて出逢ったことのない様々な優しさに触れ、戸惑いながらも再生してゆく……。