15年前に隣に寝ていた妹・真利江が失踪して以来、“自分は何かを目撃していたのではないか”と言う自責の念に苦しめられてきた、哲学を専攻する大学院生の祐一郎。父・祐作は彼が16歳の時に病死、母・房江は宗教に走り、真利江の身代わりとして育てられた弟・祐弥も精神を病んでいた。ある日、少女監禁事件の犯人が逮捕されたと言うニュースが、そんな一家を刺激する。母は発見されたのは真利江だと信じて疑わず、祐弥も真利江が帰って来ると言って動揺した。仕方なく実家に戻ることになった祐一郎は、しかしふたりの様子にいたたまれなくなり、いつしか研究取材で知り合ったSMの女王で、彼の気持ちを“アンテナ”でキャッチすると言う不思議な能力を持つナオミに心の拠り所を求めるようになっていく。そして、彼女との対話の中で自身を解放した彼は、自ら封じ込めていた記憶を手繰り寄せる。それは、真利江が叔父から受けていた性的悪戯と、それを目撃しながらも幼すぎて何も出来なかった自分への罪悪感だった。こうして苦悩を吐き出し、現実と立ち向かう力を得た祐一郎は、その後、家族を救う為、真利江の亡霊を沼の中へ沈めた。翌朝、救済された家族は、新しい人生を歩き出そうとする。