さきに「蜂の巣の子供たち」を製作した清水宏が、松竹における「狐と狸とおかめ」を一時中止してかかった戦後の第二作である。この映画は町と温泉町をつなぐバスの中の物語で、旧作「有難うさん」で実験ずみのオールロケーション映画、カメラは「こころ月の如く」、「夜の女たち」の杉山公平担当、京都近郊の山峡が舞台にえらばれる。キャストは「肉体の門(1948)」「夜のプラットホーム」の水島道太郎と「花ある雑草」以来八年振りの顔合わせの三谷幸子、同じく旧作「恋愛修学旅行」であんまを演じた日守新一このほか、久方ぶりの国友和歌子、老将軍にふんする「桜御殿」の荒木忍のほか多数の素人俳優が配役に加わっているのが特色である。オリジナルタイトルは「秋」。