志摩半島の先端にある孤島に燈台員で小学校の教師も兼ねる青年西田が赴任して来た。島は海女の働きで持っている漁村であったが、村一番の働き者の海女野枝は西田に想いを寄せるようになった。二年前都会をあこがれ村を出たリウが派手な身なりで村へ舞いもどったが、野枝への反感から、西田を横取りしようと、自分からあらぬ噂をまきちらして野枝の心をかき乱した。西田は燈台員の藤木を通じて野枝に結婚を申込んだが、野枝に新太郎という許婚があることと、他国者とは結婚せぬという土地の風習から、その両親からことわられた。野枝は島はずれの海底にある「大日井戸」の伝説にかけて、西田の愛情を争おうとして、十五夜の夜リウと二人で海底へもぐった。大日井戸の中に秘められた真珠を見たものには恋が授けられるというのである。その結果、リウは海底の岩に腕をとられて再び浮びあがって来なかった。しかし、それ以来、野枝は「野枝よう!助けてえっ!」というリウの叫び声が耳について離れず、ついにある月の良い夜、海底から聞えて来るその声にさそわれるように、野枝も海へ身をおどらせて、沖へ沖へと泳ぎ出して行くのだった。