密輸ギャングの一味の、美男の顔役雅一は、追われる身の焦燥を、ホールで、マリを相手にジルバを踊り狂って、自らごまかしていた。ある日ふと、客席でみた百面相の男が、昔の知り合いの徳であることを知って、雅一は、その男とある悪だくみをする。それは「苦悩消滅万病快癒……」というポスターを出し、あやしげな祈祷所をつくって、無知な近くの農村の人々をだまかして金品をまきあげることだった。密輸ギャングが身をかわす一つの手だった。このインチキはしかし成功した。徳はホクホクだった。この徳に美代という娘がいたが、この娘は純情娘で、雅一や親の悪計も知らなかった。雅一は、この純真な娘に次第にかつて覚えなかった真面目な恋を感じるのだった。このごろ昔の仲間の三郎が、やって来てゆすったが、今の雅一には、この三郎をあっさり処置出来なかった。恋する身の、真人間になろうとする身の弱さだった。その頃、土地の警察では徳一味の内情をさぐり、刑事が乗り込んだ。美代ははじめて雅一や父の正体を知った。だがその時、雅一と父は、奥の祈祷所で、美代のことについて争っていた。徳は美代を雅一などにやりたくなかった。それは父親の愛情だったろう。雅一の拳銃は火をふいた。そして雅一自身が傷ついた。雅一は傷をおさえて、ホールにたどりつき、マリと最後のジルバを踊るとバッタリ倒れた。そして美代にすべてを告白した。徳も美代の真心に打たれ、町の人々にひれ伏して許しをこい、雅一とともにひかれて行くのだった。