東京湾に面した貧民集落。この集落には、塚田組というヤクザの一団がいて、集落を暴力で牛耳り、住民は行動の自由さえ奪われ、牛馬のような生活をしていた。集落の施療所に赴任して来た古沢医師は、集落の実態を見て驚き、敢然と粛正に立上り、保育園の矢島昌子と一緒に、無気力な集落民の志気を鼓舞して歩いた。寝食を忘れた二人の努力が実り始めた頃塚田組の奸計で刑務所に入れられていた岡村健というヤクザが戻って来た。義侠心の強い健は、集落の実情が変らぬのを知ると再び塚田組に挑戦した。しかし、それ迄の生活体験から“暴力には暴力を”の信念を持った彼の凶暴な行動は逆効果を生み、集落民の生活はまた元に戻り、古沢医師の暴力否定の夢も空しかった。これではならぬと、健を恋する幼馴染の昌子の必死の願いで健は暴力を止め更生、塚田組の悪罵にも耐え懸命に働き、一方、古沢医師の奔走で塚田組の悪事の証拠固めが進むとともに、集落民は塚田組の暴力的使役から離れ海運会社の雇員にして貰うところまで漕ぎつけた。そうしたある日、健は塚田組の罠にかかり、振ってはならぬ暴力を振ってしまった。体面を汚すと集落民の全員は海運会社をクビになり、またも元の生活へ戻ってしまった。健を見る集落民の冷い眼、事情を知った健は怒りとともに塚田組を襲い幹部を次々と刺していった。古沢医師と昌子それに確証を握った警官隊が駈けつけた時は既に遅かった。自らを抑制できなかった健は「俺ァこんなことしか出来ねえんだ」と叫び続けるのだった。彼は再び刑務所へ、「いつまでも待つわ」という昌子の言葉を後に戻って行った。