江戸時代からの暖簾を誇る西銀座の菓子屋南蛮堂も今では家運振わず、当主平太郎は目下アメリカに商業美術の研究で留学中の息子修一に、唯一の希望をつないでいる。その南蛮堂を掌中に収めようとたくらむ新興菓子屋桜ベーカリーの女主人桜子に、南蛮堂の借金証文を餌にしてとりいった金融ブローカー望月は、桜子の娘杏子が目当てなのだが、杏子は修一と相愛の仲だった。平太郎が修一に「スグカエレ」と打電したのは、借用証文をタテに店を乗取られそうになったからである。ところで、南蛮堂の養女春江は修一の許婚だが、彼女には店の職人で五十嵐という恋人がある。アメリカから帰った修一は、妹の不二子から春江との結婚式が迫っているときかされ、慌てて裏隣りの芸者屋つるの家の二階に身をかくした。そこの芸者夢千代は修一の幼馴染である。修一の指金で、今度は春江が家出をした。ふとしたことから、望月が南蛮堂と桜ベーカリーの横領をたくらんでいると知った修一は、杏子に会って、望月から桜ベーカリーの改築に建築技師としてアメリカから招ばれたこと、そして春江と結婚する意志のないことを告げた。さらに修一は電話戦術を用いて平太郎に春江と五十嵐の結婚を承諾させた。一方、杏子から結婚を拒絶された望月は本性を現わし、桜子親娘を脅迫にかかるが、修一の活躍で危いところを救われた。そして、春子と五十嵐、杏子と修一が結ばれ、平太郎と桜子の間にも老いらくの恋とやらが芽生えたのである。