村の少年太郎が激しい腹痛に襲われたが医者のいない村では手の施しようもない。怪し気な薬や祈祷で痛みを押えようとするが効かない。その様子を沙羅の木のある峠から見ていたキャンプ旅行中の六人の学生が救援に降りて来た。彼等は近村にいるという医者を探しに出かける。六人のうちの一人は医学生の竹中俊子であったが彼女は太郎の腹痛を急性盲腸炎と判断した。だが手術をすることはこの村では出来ない。医者を探しに行ったうちの一組が呑んだくれの元軍医といわれる榊原軍之進を見つけ、泥酔の彼をリヤカーにのせて連れて来る。一方、俊子は太助を一刻も早く医者に見せるよう村人を説いた。結局太助は戸板に乗せられ運ばれることになり、村人達は手術の可否を論じながら沙羅の木のある峠にかかった。軍之進をのせたリヤカーもかけつけた。太助につきそう母のお咲は戦争で死んだ夫を思い、酔顔朦朧、リヤカーに揺られる軍之進の脳裏を去来するのは戦場に倒れた部下の姿であった。やがて峠の上で意を決した軍之進の手術が一同注視のうちに始まった。そして太助は一命をとりとめた。ところが軍之進は人間を扱う医者ではなく獣医であったことから医師法違反で検事局の取調べを受けることになった。学生達を始め村の人々は参考人として呼ばれた。一同の供述が終りやがて検事と軍之進が無医村問題を禅問答的に始め検事は破顔した。軍之進は無罪となるであろう。