うららかに晴れた東海道。役人に追われ山篭りしていた胡麻の蝿おりゃんこ文治とどんぐり安も春風にうかれてまかり出たが、迫る空腹にたえかね、侍半田半兵衛の大小、着物を失敬してあっぱれ二本差しの道中姿、どんぐり安まで供の奴に化けおおせた。次の宿では仇をたずねる若侍多胡十兵衛の路銀もいただく。すっかり悦に入った二人が、とある街角で飴売伊之助親娘のうたなどききながら、旅姿も美しい娘お銀に色目をつかっていると、目に角たてた多胡がとんでくる。が、人ごみの中に半田半兵衛をみつけた多胡は、「おのれ父の仇」とばかり向きをかえてとび去った。--三島の宿でお銀と泊りあわせた二人は大よろこび、文次は安をお銀めがけてつきとばし、おどろく彼女のまえで安をポカポカ、「下郎、悪い病気をおこすな」と意見する。はったりが利いてかお銀の文次をみる眼は色よかった。いい気分の彼が廊下にでたとたん、多胡とかちあって屋根にとびだす。屋根伝いにお銀の部屋へいりこみ、彼女が番頭惣七と駈落ちしたいきさつをきかせられるが、家からもちだした二百両は、惣七をまんまと色仕掛けで落した女道中師双六のお政の手にわたっている。文次はこれをとりもどしてやるが、廊下でこんどは半兵衛と衝突、あわててとびこんだ布団部屋で首つり寸前の伊之助をみいだす。駿河屋東兵衛のイカサマにまけ借金のかたに娘をとられた、というわけである。件の二百両をすっぱりくれてやった後で我にかえり、安ともろとも東兵衛の賭場にあばれこんで、金を奪回した。--お銀はむかえにきた父親とともに家へかえり、のんきな胡麻の蝿二人は、快晴の東海道をぶらりぶらりとながしてゆく。