江戸っ子の弥次郎兵衛と喜多八の両名、気随気ままの東海道の旅へと出たが、神奈川をすぎた松並木で、弥次郎兵衛の乗った馬があばれ出して、折から通りかかった大名行列のお駕篭の前に転げ落ちた。普通なら手打ちになるところを、さばけた殿様で江戸っ子の気っぷのが気に入ったと赦されたばかりでなく、宿の小部屋ではたっぷりお酒もいただいた。殿様は、桧垣重兵衛という家臣をこの二人につけられて、それから行く先々の二人の滑稽な行動を遂一報告するよう命じられた。三人は、途中番頭風の男と道ずれとなり、一緒に宿をとるが、これが道中名物のごまの蝿で、弥次、喜多二人は無一物となる。桧垣が金を用立てようというのもことわり、二人は尚も旅を続けながら、父を訊ねる可憐な巡礼姉弟と一緒になり、五郎兵衛という名をたよりに、とんだ人違いの父親を探し出して来たりした。恨み重なるゴマの蝿を見つけ、苦心の末捕らえるが、なんとこれが巡礼の真物の父親。可愛い子供のために再び悪心を起すなよとさとして、立ち去る両人を、殿様は美しい眺めじゃと賞でられるのであった。