ポーランドの小さな村。ベロニカ(イレーヌ・ジャコブ)は、コンサート歌手としてのデビューも決まり、優しい恋人もいて恵まれた青春を送っていた。時折襲う胸の痛みだけが気がかりだった。ある日彼女は連帯のデモと機動隊が衝突する広場を逃れようとしている観光バスの中に、自分とそっくりの女の子を見つけて立ちすくんだ。彼女はベロニカには気づかず、盛んにカメラのシャッターを切っていた。そういえばいつももう一人の自分がいるような感覚があることをベロニカは思い出した。いよいよ演奏会の日、歌うベロニカは突然あの胸の痛みに襲われ、舞台の上で倒れ、そしてそのまま息絶える。同じ頃、ポーランドでシャッターを切っていたもう一人のベロニカ(イレーヌ・ジャコブ=二役)は、パリで知り合ったばかりの男とベッドをともにしていたが、突然の悲しみにとらわれ、何かが喪失したことを感じる。彼女は音楽教師のもとを訪れ、その才能を惜しまれながらもレッスンの中止を申し入れる。また彼女も突然胸の痛みに襲われた。パリのベロニカは小学校の音楽教師だった。彼女のお気に入りで、生徒たちに演奏させている200年前のオランダの作曲家の曲こそポーランドのベロニカが舞台で歌っていた曲だ。ある日、彼女は学校のホールで上演された人形劇を見て、その神秘性に魅了され、その人形使いアレクサンドル・ファブリ(フィリップ・ヴォルテール)に関心を抱く。その頃から彼女の回りにはポーランドのベロニカと通じ合う奇妙な出来事が起こり、さらに郊外に住む父親(クロード・ドュヌトン)の家にいたベロニカのもとに匿名で1本のテープが届く。彼女はそこに録音されていた車の発進からカフェのウェイトレスの声まで、行動の道程を示す音通りにしてカフェに行き着くと、そこにはアレクサンドル・ファブリが座っていた。運命の出会いを確信するベロニカだったが、単に小説を書くために実験してみたというファブリの答えにショックを受ける。だがそんなすれ違いの果てにやがて2人は互いの愛を確認しあう。全てが知りたいというファブリの前に自分のバッグの中身を全部取り出して見せるベロニカ。そこには彼女がポーランド旅行に行った時の写真が入っており、その1枚に自分とは別の、ポーランドのベロニカが写っていることに気がつく。その時パリのベロニカはもう1人のベロニカの存在を確信した。そして彼女の霊感によって自分を救い、恋を成就させてくれたことを実感するのだった。